第52話:将来に向かって
「ノア様、カンリフ王家が滅びました」
実家からの使者が俺を前にして話してくれる。
全て事前に知っていたが知らないふりをする
「そうなのか、それは大変だな」
「直ぐに家に戻って欲しいと公爵閣下が申されておられます」
「申し訳ないがそれはできない。
私は一度家を出た身だ。
レオもハザートン公爵家を継ぐ覚悟決めて励んでいただろう。
それを今更のこのこと戻るわけにはいかない」
「いえ、レオ様もノア様が戻ってくださることを望まれておられます。
どうか直ぐに戻られてください」
「いや、人の心とは複雑怪奇なものだ。
望んでいて望んでいない事もあるのだ。
一旦レオが継ぐことになった公爵家当主の座を、俺が着く事はない。
それと、俺の事を心配してくれているのだろうが、それは不要だ。
既に伝えているが、俺は大陸連合魔術学院の理事長代理になった。
直ぐに代理が取れて正式な理事長になるだろう。
そうなれば大陸の何処に行っても侯爵待遇だ」
「それは存じ上げませんでした。
しかしながらそれは一代待遇ではありませんか。
子々孫々爵位を継がせられる公爵家に戻られる方がいいのではありませんか」
「それはレオに任せるよ。
もし子供が生まれて爵位と領地を継がせたいと思ったら、俺は今の立場と稼いだ金を活用して大陸各国で爵位と領地を買う。
だから何も心配はいらないよ」
「もう言葉を飾らずに率直に申し上げさせていただきます。
ノア様には滅んだカンリフ王家に成り代わり、国王になっていただきたいのです」
「それもレオにやってもらおう。
何なら父上がやられてもいいのではないか。
父上が戴冠されてレオが王位を継ぎ、テオがハザートン公爵家を継ぐのが一番いいのではないか」
「ノア様、ノア様が先頭にたってくだされば、被害を最小限に抑える事ができます」
「確かに狭い範囲で見ればその通りだろう。
だが大きな視野で見れば、俺が大陸連合魔術学院に残った方がいい。
俺が大陸連合魔術学院の理事長代理として、カンリフ王国と領地を接して国々に圧力をかけた方が、他国の侵攻を抑えることができる。
その事は父上もレオも分かっているはずだ」
「しかしノア様、私は公爵閣下とレオ様にノア様にお戻りいただくように命じられております、どうか一緒に戻られてください」
「しつこいですわよ。
もうあきらめて帰りなさい。
私が保証します、ノアお兄様の申される通りです。
これ以上クダクダ言うと私が許しませんよ」
エラが助け舟を出してくれる、ありがたい事だ。
公爵家当主でも責任が重くて嫌だったのに、国民全ての生命財産を背負う国王など絶対になりたくない。
俺は責任を背負うことなくのんびりと暮らしたいのだ。
だがエラの将来には責任を感じているから、この機会を利用して侯爵位か辺境伯位を購入する事を真剣に考えてみよう。
暴虐王女に婚約破棄追放されましたが、臭くて苦手だったので喜んでスローライフさせてもらいます。でもしつこく狙うなら殺しちゃうよ。 克全 @dokatu
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