特別編 年の初めの例しとて 令和5スペシャルバージョン 2




雄一ゆういちさん。そこに座って」



杏子きょうこがドスの効いた声で座布団を指さす。



「はぁ、もう座ってますが」



そんな雄一を杏子はジロリとにらむ。

慌てて雄一は座布団の上に正座する。


「アンタはあのの事をどう思ってるんだい ?」


杏子の視線の先には談笑している恵理子えりこが居る。

今の恵理子は雄一と会った頃の中学生という設定になっている。


「どう ? と言われましても」


雄一は困ったように頭を掻く。


「アンタがいきなり居なくなって、あの娘にどれだけ悲しい想いをさせたのか判ってるのかい? まぁ、そのお陰であの娘は強くなれたんだけど」


「・・・・僕はキーパーソンのような存在です。特定の作品の特定の人物とは深く関わらないようにするのが」


「だまらっしゃい! 」


杏子が大きな声を出したので雄一はビックリしたような顔になる。


「アンタの存在があの娘の中でどれだけ大きいモノになってるのか、くらいは判ってるんだろ。あの娘は自分の人生をかけてアンタに「もう1度会いたい」って願ってるんだ。その事をもっと深く考えなさい」


「・・・・はぁ」


雄一が杏子に説教を喰らっている、そのまた後ろには他のメンバー達とは明らかに違う面々がドヨーンとした暗い雰囲気の中でヒソヒソ声で喋っている。

あたし、と忠司ただし志佳詩しかしの3人である。


「あたしらってさぁ、このメンツの中でも浮いてるよね ?」


それに忠司が答える。


「まぁね。俺らの話ってワケ判んないし、俺らが最終的にどうなったのか ? も明記されて無いし」


うんうん、と志佳詩も頷く。


「わたしなんて闇の中を落ちていく場面で終わりよ。他の作者さまからコメントに「門松に突き刺さる描写があった方が良い」ってアドバイスを頂いて、あいつも「そうします」なんて返信しておきながら、そのまんまだし」


「ねぇねぇ、そのあいつって北浦十五の事 ?」


いきなり話しかけられて3人はビックリした。

話しかけて来たのは、その他Aだった。


「そ、そうだけど」


「やっぱし。アイツに恨みを持ってるのはアタシらだけじゃ無かったのよ!」


その他Aは両手を握りしめてガッツポーズを作る。


「そうよねぇ。私が草薙くさなぎさんの子供を産む、って話もうやむやになってるし」


いつの間にやら音美おとみも話に参加している。


「何だい、君らはあの肉を調べてるんじゃ無かったの ?」


忠司の問いかけにメグが答える。


「フィオリーナちゃんに分析して貰ったけどタンパク質と脂質で構成されてる、ってだけで結局は何の肉かは判んなかったのよ。それよりさぁ」


メグは音美に興味津々きょうみしんしんと言う感じでにじり寄る。


「女の子どうしで子供を作るってマジ ?」


「えっ! 女の子どうしで子供を作るって ?」


そこにロッシュも食いついて来る。


「えぇっと。草薙さんが言うには」


音美が説明しようとするが上手く説明が出来ない。


「あたしが代わりに説明しますね」


と言い出したのは桜子さくらこだ。


「草薙さんは自分の排卵された卵子にY染色体を組み込む、って言ってました」


「ふぅむ、それでXY性染色体を作ろうって事か。しかし、そんな事が実際に可能なのか ? フィオリーナ、君はどう思う?」


フィオリーナは即答する。


「さぁ ? あたしの中のブラックボックス内の4番目のAIがどんな能力を持っているのかは未知数ですし。ちなみに連載は2022年の7月で中断しています」


「それを言うなら「恵理子ふたたび」なんてもっと長い期間、放置プレイです」


と、恵理子は唇をとがらせる。


「はーい」


じゅんが元気に手を上げる。


「アタシも「このいやしき地上で」の続編を書く、と言われてから半年以上も放置プレイでぇす」


そんな中で草薙がウォッカのビンを片手にリビングの中をウロウロしている。


「あ、草薙さん」


それを恵理子が目ざとく見つけ声をかける。


「何 ? 恵理子ちゃん」


「あの、音美さんが何か話があるみたいですよ」


そう言われた草薙は「ふーん」と言う感じで音美に声をかける。


「何かあったの ? 狸さん」


「だから、狸って言うな!」


音美は草薙に詰め寄る。


「例の話はどーなったのよ」


「例の話って何よ ?」


音美は「はぁ ?」と言って更に詰め寄る。


「そ、その。わ、私に草薙さんのこ、こ、こ」


サスガに恥ずかしくなったのか音美が口籠くちごもる。


「こ、こ、こ ? アナタ、狸は辞めてニワトリでも目指すの ?」


「ちゃうわ! 私に草薙さんの子供を産んで欲しい、って話はどーなったのよ」


草薙は、しばしポカンとしていたが「あぁ、アレか」と言う感じで話し出す。


「うーん、と。あの話は1時保留って言うか白紙」


「は、白紙 ? 白紙ってどーいう事よ」


音美は草薙の浴衣をつかんで更に更に詰め寄る。


「スゴーイ。これを修羅場しゅらばって言うんですね」


「って言うか。ただの痴話喧嘩ちわげんかみたい。知らんけど」


そんな声がチラホラと聞こえる。


「だって長老さまや父さんに相談したら「辞めた方が良い」って言われたんだもん。アタシの身体へのリスクが高すぎるって」


「それなら、どーして私に言わないのよ! 当事者である私に」


音美は更に更に更に詰め寄る。


「だってアナタだってジョークだと思ってたんでしょ。こんな突拍子とっぴょうしも無い話」


「そ、それは」


言えない。言えないよぉ。

草薙さんとの子作りって具体的にはどーするんだろ ?

なんて、密かに妄想してたなんて。


「あー、何かどーでも良くなって来た」


「アタシもぉ」


こんな声が聞こえてくると皆はまた談笑を始める。


チッ


そんな中で、その他Aは舌打ちをしていた。


せっかくアイツを弾劾できる良いチャンスだったのにぃぃ


と。







つづく・・・・・・・・のかなぁ ?




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そこには存在しない何か 北浦十五 @kitaura

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