第3話 カジノでチーム集会

 チームルームの真ん中にアイアンマンが立っていた。静夏さん。

 大体、いつもピーニャさんと一緒にいる感じ。

 ピーニャさんは赤髪の、元気系女の子。

 静夏さんは、基本女の子なんだけど、時折アイアンマンの再現キャラに変わる。そして、そのインパクトはなかなかのものだ。


 同じように、HARUさんとsuzumeさんもよく一緒にいる。


 リアルでもお互いに知ってるみたいだけど、どういう関係なんだろう?


 他にも、自称女子中学生や高校生もいたりする。もちろん、ネトゲなので、お互いに真実を掘り返すことはしない。


 彼らが本当にリアル知り合いなのか、証明するものは何もないし、みんなの年齢だって、本当のところは、闇のなか。

 でも、それがオンラインゲームなんだ、ということで。


「ぴいんぽんぱーんぽーん。あと五分でチーム集会をはじめます。緊急行ってる方はがんばって!」

 パグさんのアナウンスとともに、徐々にチムメンたちが集まってくる。


 十五人、くらいかな。


「さー、時間になったので始めていきましょう」

「皆さん、こんばんは」

 パグさんがチムチャで叫ぶ。


 それに合わせて。


「こんばんは」

「こんこん」

「やほー」

「こんばんわーの」


 挨拶が飛び交う。

「きょえうはラッピースロット退会やりまーす」

 パグさん、さすがの誤字が炸裂している。

 だけど、間違いなく読めてしまうのは、訓練のたまものか。


「スイッチ!は309、PS4は039。PCは二つに分かれまーす」


 PSO2には、カジノエリアがある。

 スロットマシンやポーカーなどで、コインを賭けて遊ぶ場所だ。

 そのうちのラッピースロット。

 ラッピーという鳥のイメージキャラクターの姿をしたスロットマシンがずらりと並ぶ。

 りぼんを近づけると、それぞれの台が選べるようになっている。


 ちなみに、境界を超えるオンラインゲームという触れ込みのPSO2は、さまざまなハードでプレイすることが可能だ。

 だが、テンニンドー社のスイッチ!とソーン社のPS4(PlatformStation4)の間にはおとなの事情の壁があり、会話はおろか、ロビアクの反映までキャンセルされている。

 何とかしてくれないかなー、これ。

 と、いうことで大体、どちらとも会話できるPCプレイヤーが通訳をしてくれる。

 遊べるブロックも違うため、こんな風に分かれなきゃいけないというわけだ。


 運営さん、マジで何とかして……。


「全員席についたかな。さー、はじめー」


 ラッピースロットは、いわゆるスロットマシン。スロットの各リールに描かれた絵柄を揃えることで、コインを獲得できるというもの。

 仕様としては、乱数まかせのしくみなので、テクニックがはいる余地はあまりない。

 あまりない、というのは、一応特定の絵柄を三つ揃いを五回ためて突入する「RAPPY CHANCE GAME」というのがある。ここでの「目押し」が唯一のテクニックの使いどころ。


 とはいうものの、私程度でも押せるので、ほぼ運任せには違いない。


 すると、「静夏さんがラッピースロットで大当たりしました」というアナウンスが。


「早っ!」


 こんなもの、勝ち負けはないのだけど、何か悔しい。

 それでも、ようやく「RAPPY CHANCE GAME」にたどり着いた。

 すると。


「静夏さんがラッピースロットで大当たりしました」


 ちょっ、ちょっと、何で? アイエェェェェえぇ?


 いかん、人としての尊厳を捨てるところだった。

 そう、私も当てればいいのだ。

 チャンスゲームのチャンスは五回。

 一つずつ、心を込めて……。


 全部外れた。


 ちゃっちゃーらちゃっちゃっちゃっちゃっ、ちゃっちゃーらちゃちゃ。


 すごーく気の抜けたBGMに戻る。


「静夏さんがラッピースロットで大当たりしました」


 嘘だーーーーーーーーっ!



 ※システムメッセージは嘘をつきません。

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