第5話 すばらしく運がないな

「すばらしく運がないな、君は(笑)」

 ムカッ。


 ヤバい。超ムカつく。


 ショップエリアのアイテムラボは、武器強化の窓口だ。

 武器や防具などの装備品を強化する際にお世話になる。


 が。


 失敗した時に笑うのはいかがなものか。

 しかも。

 超ムカつくセリフで。



 再チャレンジ。



「すばらしく運がないな、君は(笑)」


 あー、やめたやめた。

「えーん。アイテムラボのドドさんにいじめられましたー」

 チムチャでぐちる。

「おつー(>_<)」

「大変だったねー」


 慰めの言葉がやってくる。


 PSO2におけるプレイヤーのトラウマ物件。

 それが、装備品への特殊能力の追加だ。


 PSO2の装備品には装備するだけで特定のステータスや耐性が上昇する。

 そして、それとは別に装備品毎に特殊能力を付与することができる。

 個々のプレイヤーごとに、武器や防具をカスタマイズできるのだ。

 そして、その素材もまた、同じ武器や防具の特殊能力。

 これを組み合わせることで、新しい特殊能力を付与できるのだが。


 これが確率100%ではないのが鬼門となっている。


 しかも、その付与方法が正直複雑で。

 初心者向け動画をもとに、がんばってみたのだけど、本当に訳が分からない。


 正直虚無。


 そこに、「すばらしく運がないな、君は(笑)」の追い打ちがかかると、モニタごと打ち壊したくなる。


「大変だよね」とチムチャ。

 パグさんだ。

「はい。超大変」

 と、返すと、よく見たら目の前にパグさんがいた。

 え?


「何作ろうとしてるの?」

「えっと、防具。HP盛りに。アレスソールにスタミナ付けたい……です」

「スロットいくつ空いてます?」

「6スロです」

「ブレイバー、だったよね、刀と弓だったら、どっち?」

「刀です」

「被弾多いタイプ?」

「死にたくないのでHP欲しいです」

「だよね」

「予算は?」

「あんまし、ないです」

「ふむふむ」

「とりあえず、今の防具、それに付け替えてみて」

「はい」


「まず」

 呪文のように、特殊能力の名前が出てきた。

「じゃあ、イクスアレスソール付を6個買おう。それとちょっと高いけど、フォードルス・グレアを6個。できればパワーⅢ、シュートⅢ、テクニックⅢがついているのを3個。6個でそれがまとまっていればおK」

「ふむふむ」

「そして、センテンスパワーとセンテンスレセプターついたの。で、あと、オルレジⅢ用のレジスト三つがまとまったものがいるな。何の組み合わせが安いかな。それは買ってあげるから、それ以外の買って」

「エレガントでよければ、スタミナのカプセル余ってるけどいるー?」

 と、声をかけてきたのはドリスさん。

「あ、ちょうだーい」とはパグさん。


 全部組み合わせると、イクス・アレス・ソールにフォードルス・グレア、センテンス・パワーにオールレジストⅢ、アビリティⅢにエレガントスタミナの組み合わせが完成した。

「あと、手ごろなSOP手に入れたら、アビリティをSOPと入れ替えよう」


「わー、ありがとうございます!」


「さて、できあがった防具の性能を確かめたくはないかな?」

「え?」



「ぴいんぽんぱーんぽーん。りぼんさんの防具完成記念でトリガー行きます。行ける人ー」

「ノ」

「行きます」

「b」

「ごめーん、ちょっと無理」

「参加」

 次々とチームメンバーたちの返事がやってくる。

「とりあえず、018に集合」


 あ、どっかで聞いた展開だ。


 チームちょこころねの面々が集まってきた。

 そこかしこでパーティーを組んでいく。



 パグさんがカウンターへと向かった。

「さて、行くぞ」

「はーい」

「パスは、いつもの?」

「そんなわけないだろう」

「パンツ?」

「馬鹿者。おっぱいに決まってるだろうが!」

「いつものじゃねーかーーーーーーー!」

「はっはっはっ」



 ロビーの床に黄色い矢印が浮き出る。

 クエスト受注の証だ。


 私はキャンプシップへと降りていく。

 そして、ドリンクを飲む。


 火山エリア。このクエスト、知らないな……。


「バレンタイントリガー。一気に走り抜けるよー」

「おー」


 タイムカウントが進んで私たちは戦場へ。

 そして、一度も床ペロすることなく、クリアすることができた。

 新防具、ありがとう。


「PSO2は、装備よくなれば、その分楽だからねー。面倒だけど、がんばろうねー」

「はい」



 ちょっとだけ上手くなった気がした。

 まだまだ、がんばらなきゃ、な。

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