第8話 縛りプレイとβテスト
チーム集会でパグさんから一言。
「来週の第二回β参加する人ー?」
「ノ」
「はーい」
ばらばらと手が上がる。
「行ける人は向こうで集まろうと思います。また細かいことはお知らせするねー」
チャンドラさん、suzumeさん、ゆみみさんあたりは手が上がらない組。
あ、もちろん私も。
とは言え、こればかりは仕方ない。
もらえる情報を待つしかない。
とは言え、グラフィック環境とかは、すでにNGS仕様にアップデートされている。
この美麗さは、やっぱりすごい。
PS4でも、この恩恵にはあずかれるので、なかなかに期待が膨らんでいる。
「さて、皆さん消火器は持ってますか?」
「?」
「消火器?」
「全クラス利用可能武器のグッバイファイアです。外見は消火器」
「あるー」
「ないー」
ないのが大半。
「ない人はウェポンズバッヂでもらえますんで、交換してきてください。あと、二、三本なら渡せます。あと、レンジャーできる人はレンジャーにしてきていいよ。本日は消火器の火炎放射縛りプレイです」
「?」
は?
「PAはフレイムバレットのみねー」
三々五々、武器を調達して、ゲートエリアに集合する。
全クラス利用可能で、固有PAがフレイムバレットだったので、ブレイバーの私でも使うことができる。
とは言え、どんな?
パグさん、ファミミさんとロレ姉さんが拾ってパーティーを組む。
そしてキャンプシップからスタート地点へ。
そこは。
火炎放射の嵐。
何?
試しに撃ってみる。
ごー、っという感じで炎が出た。
あ、楽しい。これ。
全員で燃やしまくる。
「さて、行くよー」
クエストは、トリガー版のデウス戦。
カウントが始まり、ゲームスタート。
最初は雑魚ステージ。
雑魚がわくと同時によってたかって集まって燃やす。
燃やすとは言うものの、全員持っているものはどう見ても消火器。
消火器から火が出るシュールさと、射程が短いため、わっと集まってくるコミカルさが、正直笑える。
そしてボス戦。
攻撃できるタイミングで一斉にとびかかって火炎放射。
その繰り返しで、笑いながらクエストクリア。
何よりも絵面が楽しい。
大笑いのクエストだった。
「さて、じゃあ、次は素手で行くかあ」
え?
そんな遊びをした翌週、いよいよ第二回βテストが始まった。
PS4ユーザーの私には関係ないことだけどねっ。
と、いうか今回のテストは5万人規模なので、PCユーザーがことごとくいなくなった感じだ。
PSO2にログインしても、本当に人が少ない。
一通りのおすすめクエスト消化して、何となくやることがなくなった。
エンドコンテンツは人かー。
こういう状況になると、つくづく感じる。
先週とのギャップがひどい。
「ヒマー」
「そうだねぇ」
つぶやきに応えてくれたのはゼノさん。
この人もPS4ユーザーだ。
「でも、これが終われば、NGSだからね。もうちょっと待つしかないですよね」
「そうだねぇ。今頃マスターたちは1000年後かあ」
「ですね」
PSO2NGSの世界は、PSO2世界の1000年後という設定だ。
それが自在に行き来できる、という設定は設定で謎だけど。
「そう言えば、ゆみみさんログインしてないですね。ひょっとしてパソコン買ったとか?」
「あ、twitterで、出張行ってくるって書いてた」
「そうなんですね。お仕事大変そうだなあ」
「そうだねぇ」
のんびりまったりの時間が続く。
そして、リアルの携帯にメールが飛んできた。
「山崎さん、容体急変で、先ほど息を引き取られました」
「ゼノさん、ごめん。ちょっとリアルで」
「あ、はい、おつかれさまでした」
「おつかれさま」
ログアウトして、もう一度、メールを読む。
亡くなったのは、今日の夕方。
ヤバい。涙出てきた。
悲しみだけじゃない。
悔しさとか、そういうものがないまぜになった感情。
担当している方が亡くなるのは初めてではない。
だけど。
よりにもよって、この日じゃなくてもいいじゃないか。
山崎さん、βテスト、楽しみにしていたんだぞ……。
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