第361話


止まった塊は急速に、より一層小さくなる。その大きさ直径約5cmにまでになる。10秒経てば急速に直径30cmほどにまで膨張をし、次の瞬間また小さくなる。伸縮と膨張を繰り返し、その間隔もだんだんと短くなっていく。

数十回と繰り返すと、次は小さい状態で止まり動かなくなる。すると先程以上に膨張をする。破裂寸前だと思ったカイは自分の目の前に紅い氷の壁をすぐに作ると、周囲には風船が割れた時のパンッ!という破裂音が響き渡る。音と同時に発生した衝撃により壁は砕けカイは吹き飛ばされる。吹き飛ばされつつも体勢を整え球体の方を見れば、先程までのあった球体はカイと同じほどの大きさとなっており、形も人間と同じ手足があり顔もある状態になっていた。

ただ普通と違うとすれば、顔の大半を一つの大きな目が占めておりその目の下に歯がむき出しの状態の口があった。また腕も異常なまでに長く、指というものはなく触手のように先が尖った物となっていた。そして体全体に血管のような物が浮き出ており体の中心には心臓のような物があり定期的に鼓動を繰り返していた。


「…カ、カカカ管理人ノ、シシシシ浸食カ完了」


淡々とした抑揚の無い声でつぶやくだけ呟くと、一つ目を大きく左右に動かしカイのことを捕捉すると見つめたまま動かなくなる


「セセセセセセセセ生命体ヲ確認。ジじ人格のキョキョキョキョきょきょ強制、ヘヘヘへへヘへへへ変更……」


言い終わると顔をガクッと落とし数秒だけ動かないでいると、頭に目玉が生まれカイのことをその目でも見つめる。徐々に徐々に顔を上げ、完全に上げ切りゆっくりと瞬きをすると、その口がゆっくりと端が吊り上がっていく。


「……待たせてしまったな」


表情を変えないまま自分の体をじっくりと、隅から隅まで見つめるともう一度カイのことを捉える。聞き覚えのあるその声、その視線にカイの背筋にゾワゾワとした悪寒が走る。


「この世の心理を見ていたようだったよ」


圧を感じながらも、片手に紅氷の剣、もう片方の手に蒼炎の剣を生み出し構えたカイはゆっくりと口を開く。


「ラスターって呼んだらいい?それとも他に?」

「今更人の名など今の私には不要だ。我こそが…神だからな!!!」


「神」とその一言を放っただけで吹き飛ばされるのではないかと錯覚するほどに強い圧を感じながら踏ん張るカイ。


「さて次に我がすることは何だろうか?」


異様に伸びた触手のような腕を人間の顎に当たる部分に当て考えだしたそれに、カイは容赦なく剣を振り下ろす。その剣を空いた手で受け止める。


(見た目と違ってめっちゃ固い!?)

「神となった我がすることはただ一つだろう」


触手のような腕が先から凍りつき砕ける。だがすぐに再生し今度は燃え始めている中でも、伸び続け剣の刀身を包み込むように伸び続ける。刀身が完全に飲まれる前に離し後ろに下がったカイを見つめたまま大きな音を立て剣を砕くと地面にばら撒き破片を落とすように手を振り払う。


「全人類の殲滅を始めるとしよう」

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無能判定されたけど間違いだった!?~実は最強の氷炎使い~ 紫雲ルイ @shiun24

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