第360話


 カイの振り下ろした剣は一切ブレずに目玉に突き進む。

 抵抗は感じなかったが確かに刺さったか感覚がカイの手に走る。

 より深く突き刺そうとした瞬間に刃が止まる。刃が通らなくなったから止まったのではなく、カイの体を見てみれば灰色の触手がまとわりつき動きを止めていた。

 先から元をたどると、その触手は腕に生み出された顔の口から舌のように出ており、一部の顔は触手を出した状態で待機していた。

 全力で剣を下に動かそうとするが少しも動かすことができず、時間が経てば経つほど締め付けが強くなりより動けなくなっていく。


 骨が軋む音がするほどに協力に縛られるとカイの体から蒼い炎が勢いよく燃え盛る。

 その炎が触手を凍り付かせ縛る力が弱まる。その瞬間にカイは触手を砕き再度剣を下げる。少しだけ深く入るとすぐに次の触手が縛り付ける。その度にカイは炎を出し凍り付いた触手を壊し下げるを繰り返す。


 剣が半分ほど突き刺さると塊は今までよりも大きく体を揺らし始める。あまりにも大きく左右に揺れるため体が回転して今カイのいる場所が下になろうとする。

 下敷きにされるのはやばいと判断したカイは、足に張った氷が解除し剣を手放し手から柄頭を足場にして飛び移る。それにより剣がより深く目玉に突き刺さる。

 宙に浮いたカイに向け、塊は待機していた触手をカイに向けて飛ばす。自分の体を覆うように炎を出せば、触手は炎に触れた瞬間に凍り付いて動かなくなる。


 カイが着地するのと同時に塊がひっくり返り衝撃が広がる。

 吹き飛ばされないように氷を背後に張り耐える。下に向いたことで、塊が出していた触手は根元が潰れ地面に力なく落ちたまま動かない。

 代わりに背中に顔が生み出され、同じように触手が出される。今度はその触手がカイに向けて伸び突き刺そうとする。それを同じように蒼い炎で氷つかせる。


(あっぶな!?進化してる…!)


 凍り付かせるのを繰り返す度に凍り付くのが遅くなり、ついには炎を貫通してカイまで届くようになっていた。

 貫通してくる触手を避けながら近づこうとするカイは一つ違和感を感じ始めていた。


(だんだん小さく……?刺した箇所から流れてるから?それとも触手が出てるから?)


 少しずつだが、確実に小さくなることに警戒しながらカイは避け続ける。

 すると、カイが紙一重で触手を避けた瞬間に、触手が止まり震えだす。

 最初は触手の先だけだった震えが、だんだんと触手の根本まで移っていきついには体を震わせ始める。

 ありえないくらいに震えていた塊が突然止まったことに困惑したカイは足を止める。その選択をしてよかったとすぐに思うことが起こった。

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