ため息が漏れるほど美しい禁忌

最終話まで一息で読んでしまうくらいには、この作品は面白かった。

恋愛というか不倫というかそういったジャンルは、自分の中でジャンル分けすることができないくらいには読んだことがない。
だからこのレビューが恋愛ジャンルにおいて正しいレビューになっているかはわからない。
しかし確かにこの作品は良く作られていると思う。

まず一つとして、作者に文章力がある。身分の差があるからこそ燃え上がる二人の恋慕の激情ともいえる想いが、丁寧な文章を以て自分の中に流れ込んでくるのを感じた。
一時は激しく、しかし行為を終えてからの焦りや罪悪感に襲われる心理描写は、繊細で自分も感情もその描写に良くも悪くも強く引っ張られる。
何よりも身分差のある恋という向こう見ずな恋愛と、主役である二人を現実で取材したかのような精緻な描写に対する興味が強く湧き上がるからこそ、一晩で読んでしまえるくらいに、ページが進むのは早かった。

また時折描写される詩的というか叙情的な表現がまさにと声を漏らしてしまうくらいに良く当てはまっていて、本当に作者の文章の上手さに感嘆する。

意外とあっさりというか一つの童話のような展開の早さは文字数が故だと思うので、面白い作品だったからこそもっと長く読んでいたかったという口惜しさが残る作品でもあった。

だが腹八分目という言葉があるくらいだからこそ、このくらいの方が整っていて良いのかもしれない。

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