ネコと和解せよ

「言葉で伝えてくださいね」
とは、作中で、最愛の相手に主人公が伝える言葉です。
我々にとっては、当たり前のその情報伝達方法は、不自由なことなのでしょうか?

想いを伝えるとき、もどかしい思いを感じた方は多いと思います。
「言葉はいつも想いに足りない」これは私の好きな映画からの引用ですが、想いが強ければ強いほど、文字や言葉では伝えきれないと感じる。
だから伝える側は様々な表現を考え、語彙を増やす。

でも、思うことが簡単に相手に伝わるとしたらそれは幸せなのでしょうか?
念話、テレパシー、サトリといった思考の伝え合いは、発信、受信にきちんとスイッチを置かなければ大変な騒動に繋がるのは必至です。
本音を隠す事こそが秩序を保つ方法なのだとしたら、思考はやはり、文字や言葉という「暗号」に変換するのが良いのかもしれません。

本作では、思考を多くの生命体と同期させたり、単一の個体同士の境界を無くしたりと、魂や思考のあり方にも言及しています。
冒頭に引用した、物語の終盤に語られる主人公の言葉は、他者と理解する上での理想と現実をあらためて考えさせられました。

とまあ、読後の感想はともかく、本作のおススメポイントをご紹介します。
・仮想戦記はお好きですか?
・人型ロボットはお好きですか?
・重厚な戦闘シーンはお好きですか?
・老若男女問わず、個性的な登場人物はお好きですか?
・男女の情交や、百合はお好きですか?
・猫はお好きですか?

そして、美しい日本語はお好きですか?

もしこの中にいくつか該当する項目がございましたら、きっとこの物語を楽しめると思います。


そうそう、私はネコを飼っているのですが、本作を読んだ後から少しだけ対応が変化しました。
世界中の彼らが見て、聞いている情報が、集合知として集積され、それを誰かが観測しているとしたら……。
いくら清廉潔白な私でさえ、身震いがしてきます。

私はネコに、ちゅーるを与えながら言うのです。
「わかっているね?キミは何も見ていない、何も聞いていない」と。

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