小さな矜持を全速力で突き抜いて、少女は先へと進む

 やる気のない女子中学生・菜奈にはひとつだけ生きがいがあった。それは自転車通学タイムを少しでも縮めるという挑戦! しかしある日、彼女は見知らぬ黒自転車に抜かれてしまう。しかも同じ中学に通う女子にだ。自らの矜持を取り戻すため、菜奈はリベンジを誓う。

 人にはそれぞれ譲れないものがあるものです。菜奈さんの場合は“通学路最速の誇り”ですが、つまらない毎日というありふれた舞台の中で、見事に輝くのですよ。

 彼女が日々どれだけ努力しているかが端的に、しかし明確に浮き彫られていればこそ、読者もまたその価値と絶望とを理解できる。言い換えれば菜奈さんのキャラクター力がすばらしく高いからこそ納得できるのです。

 そして謎の女子——後に陸上部のエース飯田瑞希さんと知れます——とのバトルもまた、その超キャラ力によって絶妙な距離感を醸し出すのですよ。いいんですよねぇ、少女が張り合うバチバチ。

 本気の勝負を通して菜奈さんは変わります。顛末はどうぞ本編にてお確かめください!


(「駆れよバイシクル!」4選/文=高橋 剛)