始まって、終わって、始まるふたりの物語

「光代を甲子園に連れて行きたい」。そう中村光代へ言ったのは、お隣さんで同い年の野球少年、遠藤亮平だった。かくて彼は高校で野球部へ入部し、光代はそんな彼を応援したいと心を決めてチアリーディング部の門を叩いたのだが、しかし……!

というわけで、図式的には超有名高校野球漫画な感じなのですが、ここで設定がいい感じですとんと落ちます。亮平くん、なんとベンチ入りもままならない補欠なんですねぇ。しかも、彼を応援する光代さんは努力が認められて先へ行ってしまうのですよ。いっしょにがんばるからこそ映えるはずの関係性に格差をつけることでもたらされる、なんともじりじりした緊張感、たまりませんね!

その後も季節を重ね、互いの立場が変わるにつれて、光代さんと亮平くんの距離感、その微妙な均衡が揺れ動きます。そのなんとも甘々でカユカユな感じ、まさに青春ですよ!

文量はコンパクトながら起伏豊かに仕上げられた物語、あなたの心のど真ん中に突き刺さること保証いたします!


(「春だからスタート!」4選/文=髙橋 剛)