概要
恋心って、何だろう。
クラスメイトの水野さんとともに文芸部に所属する僕は、ある日、水野さんと付き合っているはずの部長が、他の人と密会していたという噂を聞く。
妙な噂に動揺する中、下校途中の電車で時たま会う中学時代の同級生・明穂もまた、様子がおかしかった。
冬から春へ季節が変わろうとする頃、人の心は移り変わり、僕は恋心というものに触れようとしていた。
妙な噂に動揺する中、下校途中の電車で時たま会う中学時代の同級生・明穂もまた、様子がおかしかった。
冬から春へ季節が変わろうとする頃、人の心は移り変わり、僕は恋心というものに触れようとしていた。
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!恋とは愛とはなにか、を問う恋愛小説。
恋とか愛とか好きとか、そういう想いを綴ったものが一般に恋愛小説と呼ばれますが、本作はそういったものが生まれる前、もしくは生まれた直後の、まだはっきりそう呼んでいいかもわからない感情を巧みに描いています。
季節とともに毎日変わる空の色、なんでもない風景の移ろいが、主人公の日常に重なって消えていきます。過ぎていくものを忘れていいのか、今逃せばもう二度と手に入らない大切なものではないのか――。どこが行き先なのかもわからず生きる主人公の歩みを思わせます。
大切だが好きかどうか判然としない異性、その基準となるはずの好きという気持ちの定義。それらの曖昧な存在に対して、何もできない無力感、意志とは無…続きを読む - ★★★ Excellent!!!心の襞を引っ掻くような
高校生の恋愛を題材とした作品というのは無数に存在します。感情のままに突っ走る場合も、思いを胸の内に秘めて醸成させる場合もありますが、たいがい「狂騒的」な印象を読み手に残します。高校生にとっての恋は青春を賭した無謀な戦いであり、だからこそ美しいのだ、とする感覚は、いつの時代も広く共感を集めるものだと思います。
『心の迷子』は、そうした感覚からあえて距離を置いています。情景描写も心理描写も物静かで、語り手の内面が激しく表出することはありません。迷いを迷いのまま繊細に掬い上げ、心の隅にそっと書きつけたような作品、ということになるでしょう。青春映画的なドラマ性を重視する物語とはまったく違った表現…続きを読む