とあるトマト農家の収穫戦戦記

―――現代ファンタジー部門日刊１００位ありがとうございます
西暦２０３０年、世界は、「グリーンフィアー」と呼ぶ悪夢に脅かされていた。十年前、とある山間の行方不明事件から始まったそれは、またたく間に世界中に牙を向いた。毒を撒き散らす花々、子供に食らいつく街路樹、街を蹂躙する巨大な蔦。すべての植物が人間に牙を剥き、人を糧に世界を蹂躙する、そんな世界。もちろん、例外はない。にんじんはミサイルのように飛び交い、ピーマンは手榴弾のように炸裂する。それまでの「食料」は、「恐怖」へと姿を変えたのだ。そんな騒動から十年、「農家」と言う単語が別の意味を持つようになった世界、そんな「農家」の一人である日比谷達夫は、いつものように畑に立つ。襲い来るトマトを踏み潰し、撃ち壊し、収穫し今日の糧を得るために。