飛行機の戦争を予言したひとはUFOの戦争を予言していたのか

 UFOの存在をハノイのひとたちは知らないことになっている。

 というか、ホーチミンが存在しなくなったことを知らないことになっているのだから、仮に今ここにUFOが出現したとしてもハノイの人たちは何がなんだか分からないだろう。


 もっとも未確認飛行物体なんだかよくわからないだからUFOなんだろうけど。


「教官殿、かつて第二次世界大戦のかなり前に飛行機の戦争になるだろうと予言した人がいました」

「それは軍の人?」

「いいえ。ごく一般の人だったそうです。その人は戦争に負けるだろうことも予言していたようです」

「一般の人とは思えないね」

魔似阿マニアちゃあん。梨子りこが言ってるのはねぇ、見た目がごく一般の人だったっていうことよぉ」

「一般≠普通」


 ジェトの補足に更に鬼選きよりが付け足しをした。


「第六感、か」

「ギャトリン様。確かにそれに近いものではありますが根本的に違います」

「どう違う」

「偶然ではなく視ようとして視た、ということらしいんです」

「梨子。自衛官のキミがどうしてそういう話をするんだ。最も遠い世界の話のように思うが」

「ギャトリン様。違います。戦闘というものを前提にするのならば『命の遣り取り』は避けられません。そういう世のことわりの場所と時間においては技術や実践訓練は必要最低限の要素でしかないのです。最後の人生の終わりが垣間見えた時にはその予言をした人のような力が決定打になるんです」

「梨子。信じているのか?」

「わたしが信じようが信じまいがそれが事実です」

「・・・・・・・ならば。もしその人が今いたならば、UFOの戦争を予言しただろうか」

「予言する前に、お止めになったでしょうね。彼女の目が黒い内はたかだが次元が違う程度の底知れた技術・科学でコーティングされてたあのUFOの存在を決してお認めにならなかったと思います」

「日本国の自衛隊にとってその人は何なんだ」

「開戦等の重大事に当たって冷静沈着に物事を判断する為の指標、でしょうか」

「その予言を戦略上採用したのか?」

「文章としては残っていません。ですが心の拠り所とはしていたようです」

「予言をか?」

「ギャトリン様。先程も申し上げたとおりです。死に征くことが目の前に突きつけられた軍人にとって、ほんとうのことだけが精神の安寧をもたらすんです」

「マニアちゃあん」


 ジェト?


「女神様に、どうしてハノイのひとたちはホーチミンのこともUFOのことも知らないか訊いてみてぇ」


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マニアック naka-motoo @naka-motoo

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