剣と魔法とロボットと……。

 今回読者諸兄に紹介する『蒼薔薇の狙撃手』は、程よい味わいのワインの様な作品である。


 本作品の舞台は科学と魔法が両立している世界。

 表題にある様に、主人公は自分でレストアしたロボットを操り冒険を繰り広げていく。

 科学が浸透したファンタジー世界といった趣で、途中からは『新しき深淵』と呼ばれるダンジョンの探索がメインとなる。


 特徴は何と言ってもバトルだ。

 ロボット同士の戦いはもちろん、ファンタジー世界ならではの対モンスター戦もふんだんにある。

 作中に登場するロボットは今の所全長10メートル以下と推測され、主人公の乗る機体は更に小型。

 又、作品タイトルが示す通り主人公のバトルスタイルは狙撃。

 狙撃がメインの主役ロボットも中々珍しく、戦法の面でも面白い。

 強大な力を持つ主人公機ではないからこその、無双には程遠いギリギリのバトル。

 主人公達が闘いの中で積み上げる戦術は、目の肥えた読者諸兄も読欲をそそられるはずだ。

 又、ロボット物で『むせる……』のキーワードにピンとくる方は、最初のエピソードで『メロウ』で『リンク』な展開にニヤリと出来るかもしれない。


 描写スタイルは素直で外連味がなく、地の文は特に読みやすい。

 世界設定がファンタジー寄りなのも相まって、SFが苦手な読者諸兄でも難なく読みこなせるだろう。

 勿論ライトで読み易いだけではない。

 描くべき所はちゃんと力を入れて描かれている。

 ハードな作品を好む読者諸兄も『軽くて物足りない』との感想は出ないはずだ。


 本作品はまだまだ序盤の様で、これからの展開が楽しみである。


 程よい味わいだからといって、一気に飲み(読み)干すのは勿体ない。

 熟成させる時間こそが、後の世に残る名品を産むのだから……。


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