終わらない戦後の闇に、その牙を突き立てろ!

戦争が終わっても、戦い、傷つき、運命を狂わされた人々の苦しみは終わりません。
本作は戦後復興に取り残された街、人、社会の闇に跋扈する、薬物依存の元軍人である暴徒「フィンド」と、彼らを追う主人公たち「ハウンズ」の物語です。
両親を戦火で失い、たどり着いた街で懸命に生きる少女イレイズの目に、「フィンド」も「ハウンズ」も当初は似たもの同士、平穏を侵食する異物に写ります。
ですが悪夢のような夜を抜けて、彼らの真実、敵の真実、自分自身の真実に彼女が向き合っていく、その描写が残酷で優しく、秀逸です。
地獄への道は善意で舗装されています。
きっと誰もが、限られた選択肢の中で最善を尽くしている、それでも現出する犠牲と悲劇のただ中で、憎しみではなく意志の強さで立ち、戦う登場人物たちの姿に惹きつけられてやみません!

その他のおすすめレビュー

司之々さんの他のおすすめレビュー626