ss 月に行ってみよう③

「×××」


人間の限界を遥かに超えた美しすぎる魔法。

無駄が一切なく、魔力の消費量も普通の属性魔法と大差ない。

常人には凄さすら理解できないその魔法は、宇宙船一隻を丸ごと『瞬間移動』させた。

瞬間移動の一つや二つならば、結人にもできる。

しかし、これほど素晴らしい魔法は今までに見たことのないものだった。


思わず見惚れてしまい、気づいた時には既に大気圏外にいた。月まではだいたい100kmほどのところだ。


「結人には、これぐらいできるようになってもらわないと困るわ。」


「いや無理でしょ。」


思わず即答してしまった。

このような芸当、もちろんできない。できる未来も見えない、でも何故か近いうちに出来そうな気がする自分が怖い。


「顔になんとかなるかもって書いてあるわよ。」


「いやいや、無理でしょ。僕なんかとは比べ物にならないぐらい無駄がなさすぎる。」


そんな2人の会話を、周囲にいた元メンバー達はさらに訳わからないといった顔で聞いていた。

意味不明の意味不明を、もはやなんて表現すればいいのかさえわからない。

間違いなく魔法の最先端であり、自分達では一生かかっても到達不可能な次元だ。

今は、空間魔法を少し使えるだけで、国を代表する時代である。

自然と、拍手が溢れた。

その拍手は、だんだんと大きくなる。

もはや、拍手するしかないのだ。


「は、拍手している暇があったらさっさと月に着陸しなさい。宇宙船を使って着陸したいって言ったのはあなた達でしょ?」


だがこれは、リエスにとって一番嬉しい対応であったりする。龍は基本、友達がおらずぼっちなのだ。

リエスも、妹のヘレナぐらいしか長い間会話をしてこなかった。


「お姉様、こういう時は素直に喜んでもいいのですよ?」


「う、うるさいわね、ヘレナ。」


「お姉様・・・・・・」


正直、気の遠くなるような時間、ずっとリエスの妹でいられるヘレナはすごいと思う。

ちなみに、両親はいるのか聞くと、いるけどいないという曖昧な答えが帰ってきた。よくわからない。


しばらく進むと、月がとても近い位置まできた。ハンドルを握る茜は、手慣れた手つきで船を降下させた・・・・・・ように見えた。


「茜お姉ちゃん、カッコつけているけど、自動運転オートコントロールだよね・・・・・・」


「それは言わない約束だよ〜美月ちゃ〜ん」


どうやら本当の事らしい。

確かに大雑把な姉さんにしては完璧な操縦をするなと、思っていたところだった。

フワッと少し浮いた後、綺麗にピタッと着地した。


「到着〜」


「「「いぇーい」」」


茜の掛け声とともに大盛り上がりとなった船内は、それぞれ記念撮影などを行った。


そしていよいよ、月に足をつける。

宇宙服を人数分積んでいないので、魔法を使える人は魔法を使いほぼ全員で船外へと飛び出した。目の前に広がる景色は素晴らしく、満天の星空や我らが青き星ー地球が見える。

地表にも、沢山のクレーターがあったが、宇宙人がいない事だけは少し残念だった。


結人も、妊婦となった咲夜を支えながら、外に出る。本人は、支えなど必要ないと言っていたが、心配であったからだ。


「すごい綺麗だね、咲夜」


「そうですね、結人さん・・・・・・アポロ11号の2人のパイロットの気持ちがわかります。」


「本当にすごい・・・・・・『イセンドラス』と『ネオルカ』の時はそんなに別の星って感じはしなかったけど月は本当に別世界だ・・・」


わりと緑の多い土地しか訪れた事がない結人&咲夜はこうした岩しかない星を訪れたのは初めてであった。


「今日は早起きしたかいがありましたね。」


「これに関しては、姉さんに感謝しないとだね、少し癪だけど。」


「ふふふ、素直に思いを伝える事が、女の子は1番嬉しいと思いますよ、私も含めてですが・・・・・・」


「そ、そっちも善処します。」


「ふふふ、楽しみにしてます。」


並んで歩く2人の先には2人が生み出す可能性のように、無限の宇宙が広がっていた。

2人はそして、再び立ち上がる。



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