第12話 遠征参加

 翌朝、といってもまだまだ外は暗くて視界が悪いが起きる時間だ。持っていく荷物は確認済みなので、着替えたら荷物を持って集合場所に行くだけだ。まぁ、それはそれとして起きたときにはエルは荷物を取りに自分の部屋に戻ったのか居なかったな……いや、暗闇そんなに苦手にしてないし余裕で動いてるよね?1人で。え?何?意味が分からない。


「あ、アル様、準備が良ければ集合場所に行きましょう」

「いや、疑問なんだけど暗闇が苦手だから一緒に寝たよね?」

「?……今は朝ですよ?」

「えぇと……夜限定ってこと?」

「まぁ、そういう事です。今から明るくなってきますから」

「えぇ……」


 廊下でエルと合流して集合場所に行くけども、納得出来ない。というより夜限定って何?聞いた僕も僕だけど意味が分からない。まぁ、エルの言う通り今から日が出てきて明るくなってくるだろうけども、まだまだ暗いし地平線も白んだりしてきてないよ?っと、暗いけど流石に集合場所は松明とかランタンで多少は明るいね。既に結構集まってるようだ。


「ほう?集合より早く来るとは良いことだ」

「……どうも」

「おいおい、何の冗談です?まだまだガキじゃないですか」

「はぁ。話はちゃんと聞いておけと言われていただろう?今回の特別参加者様だ。伯爵家のご子息様ご息女様と同じように扱え」

「いや、でも、見た目どおりの年齢なら伯爵家でも異例の早さじゃないですか?」

「安心しろ。彼は見た目に近い年齢は合っているが、既にご息女様と同じ首都の学園に通っており、野営訓練も既に経験している。とのことだ」

「……流石に前線には行かせませんよね?」

「それは知らん。最前線は無いだろうが、前線や後方、斥候位はやらせると思う。夜間は無しだがな」

「僕達としては、夜間警戒に就かないことに不満が有りますけどね」

「なんで伯爵様が参加させる子達はこうも積極的なんですかね?普通なら休める事に喜びますよ」

「知らん。それと夜間警備をさせないのはあくまで客人扱いであり、軍属ではないからだ。多少危険な目に合う可能性も有るが援護はするし、そこは安心しても良い」


 等と会話をしていたら、僕達が参加する部隊の隊長であるアルラ・アルバートが来て隊員達が隊列を組始めたので列に加わるため、とりあえず最後尾に居れば問題ないはず……何故か最前列にされた。


「さて諸君、我々の最初の配置は後方物資の護衛だ。今回はいつもと違い客人が居るが、諸君等と扱いは変わらん。ただし、寝る子は育つというわけで夜間警備だけ免除だ。質問がなければ配置に着いてもらう」

「隊長、物資護衛という事は負けたんですか?」

「あぁ。粘ったのだがダメだった。最初はクジで次に腕相撲をしたが、最終的に母上に小さい子が隊に入るのだから最初は慣らしで物資護衛に甘んじろと言われてな。流石の私もまだ母上には勝てぬ」

「勝ったところで、最終的には伯爵様という最大の壁がありますよ?」

「くっ、私としては常に前線に出たいのだ!質問が無いならさっさと行動しろ。移動中は私語は慎めよ?」

「「「はっ!」」」


 というわけで、事前の打ち合わせ通りにエルに引き上げてもらい、エルの馬に一緒に乗って出発。いつもと違い、高い視点で周りが見渡せるので良いね。来年には1人で馬に乗れると良いけど……流石に1年でエルの身長を越せるかは分からないな。


「なんだ、2人乗りとは独り身の連中が嫉妬するぞ?」

「流石に子供相手には嫉妬しませんてっ!?」

「むしろ隊長も嫉妬する側では?」

「仕方ないだろ。私より強い連中は大抵婚約者が居たり妻帯者なのだから」

「さっき私語はしないようにって言ってませんでしたか?お姉様」

「暇なんだから良いだろ。前言撤回!警戒や行軍に支障が無い範囲なら私語は許す!私がっ!今っ!決めたっ!!」

「えぇ……」

「隊長が獲物を見つけるより先に見つけて対処するぞ?このままでは例のごとく見つけたら突撃しかねん」

「間違いない」

「お姉様……ちゃんと指揮はして下さい」

「しているぞ!失礼なやつだな」

「あの?あまり叫ぶと臆病な獲物は逃げますよ?」

「それもそうだな」

「まあ出発したばかりですし、狩りの範囲にはまだまだ入ってないので大丈夫ですよ。流石に森や山に入ったら隊長も静になりますよ……多分」


 しかし、物資の護衛という仕事は暇である。いや、警戒はしているけれど馬の操作と警戒以外の仕事がなかなか来ない。隊列としては先頭から斥候隊、第1遊撃隊、本隊、物資輸送隊と物資護衛隊、第2遊撃隊の順で僕達が居る物資護衛隊はもれなく後方組である。そして、部隊の役割は1日毎に代わるらしいけど、物資輸送隊は見習いや新兵等実戦経験が浅い者達が担当しているので基本的に固定だそうだ。

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サイコパス、異世界にて混沌を撒き散らす 双頭蛇 @soutouja

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