宿屋の女将は、素敵な鎧に恋をする。読者は、女将と幼子に恋をする。

  • ★★★ Excellent!!!

 映画のようだという感想を、久々にこの作品で持ちました。

 ほのぼのとした導入から、クライマックスの盛り上がりまで、読み始めると止まらない見事な構成と確かな文章力、人物相関の妙。読後はまさに、映画を見終わった後の感覚。スタッフロールまで噛み締めてしまうやつです。

 この作品の一番の魅力は登場人物たち。宿屋の女将メロディは16歳の少女だけど、明るい性格と元気の良さを持ち、思いやりの心と懐の深さ。年頃の女の子らしい感情がありつつも、前向きでエゴではない正義感の持ち主。自分の考えの良くない部分に気付いた時は、それにきちんと向き合って、変わっていこうとする強さも。
 6歳の幼女ティアは、とにかく健気でいじらしい。仕草のひとつひとつが、本当に可愛い。
 読み進めるうち、この二人の事を大好きになってしまいます。

 数々の出来事に彼女達は笑い、喜び、悲しみ、そして苦しむ。その感情のふり幅を、読者も一緒に味わう事になるという。普遍的なエピソードも、そう来るか!という捻りがあり、キャラの魅力を深めます。ほのぼのとしたお話の中に散りばめられる、人間の利己主義な部分、戦争のこと、身分差、貧しさ。社会の問題が、ちくりちくりと心を刺してきて、読後に心に残る要素が多いです。
 ファンタジーなのに、熱いロボバトルまで繰り広げられるので、そちらの方面がお好きな方もぜひ、一読をおすすめしたいです。
 
 一章は一気読みするといいかもしれません…!