最終話 死狩人と死神さま

「……いつ、気付いた?」

 思わず面食らった細谷が平静を装い、ポーカーフェースで尋ねる。

「セバスチャンが登場した時から……かな。今まで感じなかった死狩人ハンターの気配で気付いたんだよ。

 俺とまりんちゃん絡みで首をつっこんで来そうな死狩人ハンターと言ったら、君しかいないからね」

 勘が冴え渡るシロヤマの発言は的を射ている。セバスチャンが登場する少し前から、細谷は日本間の外で室内の様子をうかがっていた。

 まりんが人質にとられ、窮地きゅうちに追い込まれたシロヤマに代わり出て行こうとした瞬間にセバスチャンが現れ、動揺した細谷はチャンスを失った。

 消していた気配を出してしまったのは、その時だったに違いない。ほんの少しだけだったが、シロヤマは瞬時にそれを感じ取ったのだろう。

 細谷はときどき、こう思うことがある。はたから見ると、シロヤマは死神らしくもないチャラ男のイメージが強いが、締めるところは締めて、気遣いが出来る。人として、死神として、恋敵ライバルとして申し分ない。と。

 けどこれはこれで、別問題だよな。そう、思い直した細谷は

「俺がいつ、ビルの屋上でおまえと愛を誓い合った?」

 シロヤマの大鎌と槍を交差させながら、極めて冷ややかに問いかける。

「俺が本気で愛しているのは、赤園まりんだけだ!そこを勘違いするなよ!」

 物凄い剣幕で啖呵たんかを切った。

「じゃあ……俺との仲は?」

「おまえとの仲は……」

 細谷の剣幕に圧倒され、やや不安げな表情を浮かべるシロヤマに尋ねられ、細谷は言葉を詰まらせた。

「……恋敵ライバルであり、友達としての仲だよ。あくまで、そこだけの……な」

 細谷にとって、やっとの思いで絞り出せた言葉だった。ほんのり頬を赤らめ、素っ気なく答えた細谷の気遣いを、プラスに受け止めたシロヤマの顔がぱっと明るくなる。

「やっぱり、細谷くん……好き」

「なんでそうなる?!」

 恋する乙女と化し、頬を赤らめたシロヤマに、細谷は全力でつっこんだ。

「愛……か」

「おや、あなたにも芽生えましたか?人を愛する気持ちが……」

「思い出したのだよ。かつて、ひとりの女性を愛していたことを……なんの感情もない、無の世界で、長らく死神をやっていると、恋愛が芽生えていた時ですら、忘れるものだな」

「そうですね」

 懐かしむように微笑ほほえみながら、過去を語った超美麗な死神さま(フードを脱いでいる)に、意味ありげな笑みを浮かべたセバスチャンは、静かにそう返事をした。

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赤ずきんちゃんと死神さま 番外編~超リアルな死神さま~ 碧居満月 @BlueMoon1016

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