虚弱な少年が修行して強くなる物語。だが、強さとは何かを問う物語でもある


 ケンはもともと喘息もちの病弱な小学生。ところが、夏休み。鍼灸師である叔父さんのところに厄介になったおり治療を受け……たのではなく、修行と鍛錬に明け暮れたのだ!
 肉体改造にともなう精神修養、古来より伝わる秘法を体得したケンは、お灸をすえることにより強大なパワーを発揮するヤイト拳に開眼する!

 そして、二学期。すっかり逞しくなったケンにクラスのみんなはびっくり。強くなった上、人間としても成長したケン。でも、修行の道と成長の過程に終わりはないのだ!

 と、書くと、なんか堅苦しい話に思えてしまいます。ところがギッチョン。本作はへんな昭和のノリが炸裂する、奇天烈な物語。そもそも物語の形式が、ケンの体験をクラスメートの女の子が小説化したものとなっています。その女の子マッキーも、美少女なのに守護霊さまの力を借りて突飛な行動を連発。
 修行を受けたケンもすっかり浮世離れしてしまっているし、親友となるチューリン拳の使い手チューリンも変な奴だし、担任の権田先生もいまのご時世にありえない教師だし、もうひとりのヒロインであるミーナもどこか変!

 おかしなキャラクターたちがおかしなノリでおかしなことを連発する、軽快な読み物。でも、キャラクターたちが語るセリフには、むーんと唸ってしまうような深いものがたくさん。
 背中に日光受けると、食事しなくていいって、それ本当か? ちょっと信じちゃったけど……。

 弱い少年が修行ののち強くなるという王道ストーリーは、初期のジャッキー・チェンの映画を彷彿させます。ギャグのバランスもあんな感じ。
 とにかく主人公のケンが小学生のくせに変に老成していて面白い。鶏のから揚げも軟骨揚げも最高。
 そして、弱い主人公が修行の果てに強くなるという、この単純なストーリーは、やはり男の子のハートをがっちりつかんで離さないぞ。
 これこそ、少年漫画の王道であーる!

 あ、いけね。これ、漫画じゃなかったな。




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