1500m

白川津 中々

 スタートの合図。

 風に乗って火薬の匂いがする。最初のストレートはまだ心臓が浮ついている。筋肉が笑うような感覚に嫌悪感が湧く。走るのは未だ慣れない。


 コーナーを回る。汗が噴き出す。臓腑の味が迫り上がってくる。まだ一周も終わっていないのに息が上がり苦しい。先頭にいるのに余裕がない。途中で止まってしまいそうで、怖い。


 トラックを周る。既に意識はない。早く終わる事だけを考える。だが、嫌でも後ろが気になる。負けたくない。勝たなければと思う。しかしそれ以上に肺が痛い。足が動かない。苦しい。苦しい。


 ラストの200m。未だに先頭。このままいけばまず勝てるだろう。後ろ一人に抜かれても予選は通れるだろう。そうすれば決勝。勝てば決勝。全国、決勝。


 ふと頭に浮かぶ苦しみ。決勝もまた、この苦痛を……



 足が止まる。抜かれていく。二人、三人、四人……あぁそうか……俺は、そういう人間だ……



 五着でゴール。向けられる声援は俺ではない。


 タータンを去る。汗に風が当たり、寒い。敗北の虚しさは、考えていたよりも……

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1500m 白川津 中々 @taka1212384

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