1500m
白川津 中々
■
スタートの合図。
風に乗って火薬の匂いがする。最初のストレートはまだ心臓が浮ついている。筋肉が笑うような感覚に嫌悪感が湧く。走るのは未だ慣れない。
コーナーを回る。汗が噴き出す。臓腑の味が迫り上がってくる。まだ一周も終わっていないのに息が上がり苦しい。先頭にいるのに余裕がない。途中で止まってしまいそうで、怖い。
トラックを周る。既に意識はない。早く終わる事だけを考える。だが、嫌でも後ろが気になる。負けたくない。勝たなければと思う。しかしそれ以上に肺が痛い。足が動かない。苦しい。苦しい。
ラストの200m。未だに先頭。このままいけばまず勝てるだろう。後ろ一人に抜かれても予選は通れるだろう。そうすれば決勝。勝てば決勝。全国、決勝。
ふと頭に浮かぶ苦しみ。決勝もまた、この苦痛を……
足が止まる。抜かれていく。二人、三人、四人……あぁそうか……俺は、そういう人間だ……
五着でゴール。向けられる声援は俺ではない。
タータンを去る。汗に風が当たり、寒い。敗北の虚しさは、考えていたよりも……
1500m 白川津 中々 @taka1212384
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