第7話

 清水さんが帰った後で、美佐は恐ろしい疲労感に襲われた。

 病気のせいだろうか、今週末は診察の予約の日だった。今は何も薬は飲んでいないし、治療もしていない。それまでに身辺整理をする。それから入院して最後の一ヶ月にホスピスに転院する手はずだった。

「ユキ、もう帰ろうか。最後のおうちだよ。来週からはママはもういないの」

 美佐はユキをピンクのかごに押し込んだ。

 こちらを見る目が痛々しい、ユキも私がいなくなることを知らない。



 美佐は病院で秋を過ごして、クリスマスが来る頃になりだんだんと呼吸が苦しい日々が続くようになった。聡史にもう一度会いたかった。こんなことになるなら、住所だけは分かっていたから、探しに行けば良かったと咳き込みながら窓の外を見て思うことが多くなった。

 命の炎が消えようとするまでの時間、楽しかった聡史との思い出を何度も繰り返し夢に見た。懐かしい思い出は永遠だった。


 あるとても冷え込んだ夜に、美佐は夢を見た。

「美佐ちゃん、待っていたんだ。ようやく会えたね。もう離さないよ、これからはずっと一緒だ」

 聡史は目を赤くして両手を大きく広げて立っていた。

 やっと会えた。聡史さん、今までどこに行っていたの? 随分探したわと美佐は両手を伸ばした。強く抱きしめられて美佐はとても幸せだった。



 翌朝、美佐は笑顔で息を引き取った。涙の跡はもう乾いていた。


               了



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また、会えるかな 樹 亜希 (いつき あき) @takoyan

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