蟻地獄みたいな青春ラブコメ

SNSのタイムラインをながめていると、ふと「屁理屈恋愛合戦の異世界転移モノ(アフター)」だとか、「登場人物達の発想が異世界(あさって)の方向すぎる」という面白いレビューコメントがチラホラ見えた。

異世界転移モノ(アフター)で男女青春ラブコメの小説かな…?
それにしても感想が奇っ怪すぎるな…?
というのが、この作品を読んだきっかけだった。

結論から言うと、そのファースト・インプレッションは正しかった。
第一章は体感九割コメディで一割シリアス。魔王側と勇者側で敵同士として戦ったふたりが、なんやかんやで現世に帰ってきたあとのお話だ。

このふたりはかつて敵同士だったのであたりまえのように仲が悪い。しかしそんなふたりの掛け合いの中にも「なにか」を感じさせるのだ。
それが気になってどんどん読み進めていた。

なにより、ふたりの掛け合いがとてつもなくハイセンスなコメディなのだ。「漫才コンビのニコイチ感」とでも称したらいいのだろうか。
会話しているだけで罵声が飛び交い喧嘩になる仲の悪さ、なのに険悪ではない空気の心地よさ。
頁(リンク)をめくるたびにこのふたりが、私はどんどん好きになっていった。

その空間が蟻地獄の中だということにも気づかずに。

終盤この物語はその本領を発揮し、私は残念ながら食い散らされるのだが、それは読んでみてからのお楽しみということでここには書かない。
そしてふたりの間にある「なにか」を、どうかぜひ肌で感じてほしい。

一度ハマったら抜け出せなくなっていた、一読者(アリさん)の感想でした。

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