十四、ライクそしてラブ
季節は過ぎていき、冬から春へ。シロとクロとの関係性は相変わらずだし、牟田口さんとは時々遊びに行っている。
「なあ、お主よ。いよいよ、牟田口殿に告ったらよかろうか?」
突然、シロが提案をする。
「えっそれは……僕と紅葉さんとはそんな関係性じゃないし」
「まったく、頬を赤くしおって、めんこいのぅお主は」
そういい、頭を撫でてくるシロ。それに対してクロは。
「そうですよ、いつも牟田口さんのこと話しているじゃないですか」
「うっ……それは……」
和多々比は牟田口に遊びに誘われるたび、シロとクロに思い出話を持ち帰ってきた。
そして、その頻度は増えていきいよいと恋という実が熟してきた頃合いだろう、とシロとクロは思ったのだ。
「まぁ、再び夢枕に立ってやるからの。勇気を出してやってみるのじゃ」
「でも……」
「でもも何も、旦那様にはあまり時間はないのですから、いそがないといけませよ」
そう、和多々比に残された時間は少ない。二人に急かされた結果和多々比は、「わかった、やってみる」と骨が折れ承諾した。
そして、告白決行の日。バイトが終わった後、駅前の広場に二人の姿はいる。
「あの……紅葉さん。ちょっと話しがあるんだけど、いいかな?」
すこし落ち着かない様子の和多々比、一方牟田口はどっしりと構えている。
「ん? どうしたのわたっち?」
「あの……その…もっ、紅葉さんッ! 僕と、付き合ってくだいさい!」
和多々比は頭を下げ告白をする。
「やだ」
意外な返答に時間が止まったかのような感覚に襲われる。
「だって、わたっち大学辞めたんでしょ? それになんか変なウワサ流れているし」
和多々比の心情を知ってから知らぬか、牟田口は言葉を続ける。
「マッキガン? だっけ。そんなのキモイし、なんかわたっちと仲良くしてから夢に変なのがであるサイアク」
ぽとり、と雫が地面に落ちるのが見える。それが自分の冷や汗だと気がついたのは、しばち経ったあとだ。
「もう、アタシに近づかないでね、じゃ」
どうやってたどり着いたのか、気がついた時には和多々比は玄関をくぐっていた。
「……」
「どうじゃ? 受け入れてくれたかの?」
シロが聞いてくるが、押し黙ってしまう。だが一粒、二粒と涙が落ちていく。
「どうしたんですか? 旦那様?」
クロが心配をしてくる。三粒、四粒と流れていく。
そしてついに、感情というダムが決壊し、二人にすがりつき泣き出す。
ただただ泣く。言葉もなく泣く。まるでシロが癇癪を起こしたときのように泣く。
泣いて泣いて、泣きすぎて。涙が枯れた時、やっと和多々比は顔を上げる。
「ごめん……ダメだったよ。僕のガン……バレていたみたい」
「そうか、それは災難だったの。大丈夫じゃ、儂らがいるなんとかる」
「そうですよ、もし良ければ私達が旦那様の彼女になります」
「ありがとう……ありがとう……」
貴族な猫とぼっちな人間 冬月鐵男 @huyutukiakira
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