滑らかな覚醒の後、裸であることにどれほどの意味があるのかについて。
俺っちは目が覚めると薄暗い箱のような空間にいた。
おまけにマッパだった。
しかし、そんなことはどうでもよかった。それより不思議なのは、目覚めた後の状態についてだった。
俺っちはとても滑らかに覚醒したのだ。
目を覚ます前と後で場面が繋がっているように感じる。ぶつ切りのように景色が変わったというわけではない。俺っちの意識は非常に流動的に移り変わったのだ。
まるで、幽体離脱から帰ってきた人間のように。
幽体なら裸でもおかしくないけれど、今この体はちゃんと実在している。
両手で体を触って、それを確かめる。
腰まで伸びている長い髪の毛。
そばかすひとつなく、ニキビの一個もないつるつるの頬。
細めな腕と腹。こじんまりとした乳房。
別に恥ずかしくはなかったけれど、服を着なければならないと思った。
辺りを見ると、あちらこちらに子供たちが寝転んでいる。
いや、寝転んでいるというよりかは、寝ている子供たちを無造作に放り投げたみたいな具合だ。
子供たちはみんな同じ服を着ている。病院で着るような、薄い水色のあれだ。
俺っちは一番近くにいた少年から服を奪い取る。
少年はびくともせず、ただ周期的に寝息をすうすうと立てているだけだった。
それから立ち上がって、もう一度注意深く辺りを見た。
ごちゃごちゃとしたケーブルが壁面に張り巡らされている。
正面には、赤いランプがひとつ、ふたつある。ランプといっても、豆粒みたいに小さい。
暗くて正確には把握しきれないけれど、この空間はたぶんエレベーターだ。
学校の教室一個分かそれより広いサイズのエレベーターが、ゆるやかに降下している。俺っちはそれを感じていた。
そして、正面のランプから、少し目線を落として、手前側を見た。
そこには、少女がいた。
彼女だけが、俺っちを除いて唯一起きていた人間だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます