文学少女は恋愛シチュに憧れる

タマゴあたま

文学少女は恋愛シチュに憧れる

「はあ……。どうすればいいかなあ」


 私は深くため息をついた。

 私には悩みがある。


『どうやって好きな人に恋愛シチュを演じさせるか』


 一、間接キス

 二、お姫様抱っこ


 恋愛漫画や恋愛小説では定番なこの二つを私の好きな人――正也まさや――にしてもらうこと。

 それが私の野望。

 そしてあわよくば私のことを意識してもらおう。

 私がさっさと告白して意識させるってのもありなんだけど、やっぱり好きな人から告白されたい。


 キーンコーンカーンコーン。


 そんなことを考えていると予鈴のチャイムが鳴った。


「はあ、はあ……。予鈴だからセーフ!」


 息を切らせながら正也が教室に入ってくる。


「いつもぎりぎりね」

「いいだろ。予鈴なんだから。走ってきたから喉乾いたー」

「これ飲む?」


 私はペットボトルのお茶を正也に差し出す。


「え? でもそれってお前のだろ?」

「何? 量が少ないのが不満なの? まだ半分くらいあるわよ」

「いや、そうじゃなくて……」

「飲むの? 飲まないの?」

「飲むよ。飲むけどさ……」


 正也は少し不満げ。

 このお茶嫌いだったのかな?


 ――――

「あー疲れた!」


 体育の授業って疲れるけど、体を動かすのは気持ち良い。


「だる……」


 正也はふらついている。


「ふらふらじゃん。そんなに体力なかったっけ?」

「うるさいな。今日の試合は接戦だったん……」


 正也の体が揺れたかと思うと、次の瞬間、正也の体が視界から消える。


 ドタッ。


 正也が倒れた!


「ちょっと大丈夫!? 今保健室に連れて行くからね!」


 私は正也の肩と膝に手を回し抱きかかえる。


「なんともないから! 降ろして!」

「ぶっ倒れたんだからギャーギャー騒がない!」


 正也の駄々に構っている暇はない。一刻も早く保健室へ連れて行かなくちゃ!


「すみませーん。開けてください」


 両手がふさがっているのでドアを開けることができない。


「はーい。まあ、どうしたの?」

「正也が倒れちゃって」

「それは大変。とりあえずベットに寝かせて」

「はい」


 私は正也をベットに降ろす。


「どうやら軽い貧血のようね」

「そうなんですね。よかったー」

「だからなんともないって言っただろ」

「なんともないにしては顔が赤いよ。いいから正也は安静にしてて。それじゃあ先生よろしくお願いします」

「わかったわ」


 私はお辞儀をして保健室を出る。


 うーん。正也があの調子じゃ今日も無理かな。憧れの恋愛シチュ。

 いや、まだチャンスはあるはず! 頑張れ私!

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