No.11~No.15

【No.11】


 優しい人。あなたは誰よりも強いから心なき言葉に耐えられてしまう。

 思いやり溢れる人。あなたは人の痛みも自分のものにして共に背負う。

 美しい人。あなたの繊細な感性は世の汚さがよく見えるでしょう。


 先立った素敵な人達よ、今の世界はまた生まれたいと思える場所ですか。




【No.12】


 きみの秘密を話してくれたね。出会ってまだ間もない私なんかに。それを指摘したら不思議そうにしていたきみの顔、今でも忘れられないんだ。

 大丈夫。そのまま、怖がらないで。この手を取ってもっと心音を聞かせてよ。

 こんな私を信じてくれたきみのヒーローになりたいんだ。




【No.13】


 ふたりはなんでも話した。

 人には言えない苦しみも悲しみも、分かち合いたい喜びも夢も、時と場所を越え、心を繋いだ。

 でもきみは「恋愛感情じゃない」と言う。

 きみの優しさに惹かれた時、優しさに打ちのめされるなんて思わなかった。

 その境界線を臆病者は越えられないまま。




【No.14】


 それでもいいんだ。

 私を惑わし傷つけ失望させたものの正体が、無邪気な優しさや期限付きの絆、無意識の厚意なのだから。


 それは刹那でも美しく輝いて見えた。


 ありがとう。

 これからは慰めや優しさよりも信じてほしい。私だって自力で歩いていけること。


 境界線を背に走り出す、今。




【No.15】


「私ってグズだね」

 そう言って笑う強さに気づかず、的外れな相槌が聞こえてくる。

「本当にね」

 口を挟んだのは気紛れだ。

「おい。こいつをバカにしていいのはこいつだけだ。勘違いすんな」

 お前も堂々としてろ、と睨みつけたのにそいつは嬉しそうに笑っていた。






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#140文字小説 まとめ 紺野 真夜中 @mayonaka_k

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