ふたご座症候群
「離れ離れになっても双子だよ」
かのんが言う。
「それはそうでしょ」
私が呆れると、そうじゃなくて、とつつかれる。あのんはどうしてそんなに冷たいの? とでも言わんばかりにかのんは唇を尖らせる。
夜空に一本の線が流れる。
今宵は流星群の夜。
「離れていても、あのんと私の心がいつも寄り添っていられますように」
かのんが、感傷的な願い事を言う。
でも、私を置いてこの島を出ていくと決めたのは、かのんの方だ。勝手にいなくなると決めて、勝手に別れを惜しんでいるのは、かのんの方だ。
ふたご座の双子ポルックスとカストルは、神さまと人の間にできた子供だった。でも、ポルックスは神さまの血を引き継いでいて、カストルはただの人間だった。だから二人が命を落としたとき、神さまの子供であったポルックスだけが助かった。星座でも、ポルックスが一等星であるのに対し、カストルは二等星だ。
私たちのどちらかが神さまの子供だとすれば、一等星であるとすれば、きっとかのんだろう。だから、普通の人間である私は、せめてかのんの邪魔をしないように祈ることしかできない。
また、一条の光が夜空を横切る。
今宵は流星群の夜。
私がいなくても、かのんが幸せになれますように。
Shooting Star Scrap 冬木ゆふ @u_who_u
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