概要
――かつて民衆は、その男を渇望した。
戦争に負け、クーデターの政権転覆によって首都を追われた独裁者ベニート・アルベリーニ。かつて民衆があれほどまで陶酔し、「ドゥーチェ」とまで呼んだ彼の成れの果てを見て、主人公は何を思うのか。
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- ★★★ Excellent!!!揺れ動く『今』だからこそ、読まれるべき名作
ーかつて、革命のために立ち上がった男に陶酔した民衆。だが、彼らは国が戦争に負けた途端反旗を翻し、彼に憎悪を寄せていた……。ー
私にはどうにもこの物語が「遠い世界の出来事」ではなく、「私たちのすぐ隣にある出来事」のように思えてくるのです。
新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受け、生活形態が変わり抑制を強いられる状況が続いている昨今。政治不信が増し、人々の心は不安や焦燥、怒りによって満ち溢れている。一度失敗した「人間」を「人間」とも思わず、中傷し自らの怒りをぶつける。この状況は、ドゥーチェを神格化した人々の心理状況、社会状況と酷似しているものがあるのではないでしょうか。民衆が今もなお救世主…続きを読む