第3話 コピー能力者の場合

「「ホーリーレイ!」」


寸分違わぬ閃光が両者の間でぶつかり合い、大きな爆発を起こす。


「なに!?俺のホーリーレイが!」

勇者の目が驚愕で見開く。


「ふはは!貴様の能力はコピーさせてもらった!貴様にもう勝ち目はない!」


魔王軍特別作戦班隊員、Mr.ペースト。相手の能力のみならず身体能力そのものをコピーし、足止めに関してはスペシャリストである。


(勝ち目はない!って言ってるけど大抵戦ってるうちに相手に成長されて負けるんだよなぁ…)


Mr.ペーストはなんと驚異の勝率0%。常に負け続けるが、どんな強者相手にも一定の足止めができることから、負け続けることを強いられる運命にある悲しい男である。


「「ホーリースラッシュ!」」

「「ホーリースラッシュ!」」

「「ホーリースラッシュ!」」


3度、光の刃がぶつかり合い打ち消し合う。


「くっ…どうすれば…」

勇者が打開策を探している様子が見受けられる。


(そろそろかな…)

Mr.ペーストは自身の経験から、そろそろ相手が過去の殻を破ること、シュジンコウホセイ現象が起こることで、これから自分がどうなるのかを予感する。


〜30分後〜


(こ、こいつ…!成長がまるで感じられない…!)

Mr.ペーストの予想に反し、まさかの泥沼化。


(まさか私に勝てないレベルの不器用な奴がいるとは…)


「「Mr.ペースト!ご苦労!あとは任せろ!」」

背後から辛い訓練を共にした声が聞こえてくる。


「ふはは!助太刀感謝!共に勇者を打ち破ろうぞ!」

時間を想像以上に稼いだ結果、特別作戦班が援軍に来てくれたのだ。


ただでさえ自身のコピーと常に互角の戦いしか出来なかった勇者になすすべはなく、無事勇者は瞬殺された。


「よくやった!Mr.ペースト!」

仲間たちに讃えられ、Mr.ペーストは初めての勝利の味を噛み締めた。


その後、勝率が1%になったMr.ペーストが別の勇者に普通にシュジンコウホセイでボコボコにされたのはまた別のお話。

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勝っちゃった 雪犬 @snow-dog

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