人の身でありながら、弓と三本の矢を手に巨大なムカデに挑む英雄譚は必見!

 主人公の住む近江の町に大蛇が出た。そんな噂を聞きつけて彼が現場に赴いてみればそこに居たのは巨大な竜だった。
 見つめ合ったのち、恐れることなく踏み越んで、踏み越えた主人公。その夜、彼の現れた美しい少女。彼女が語る「依頼」とは…?



 題名の通り、物語は藤原秀郷という人物の大ムカデ退治を描いた(翻訳した?)もの。
 フジワラノヒデサトと言われるとわかりませんでしたが、「俵藤太」と言えば某英霊ゲームの姿を想像できる方もいらっしゃるのでは?
 彼がその名前で呼ばれるようになる逸話を古風な文体で綴った作品です。

 昔話ということで、難しい単語、時代背景が読む側に求められるのだろうな…と、身構えていたのですが、きちんとその辺りには注釈が添えられ、知識を補完してくれています。

 むしろ、口語含め過度に現代語訳しないことが物語の雰囲気を作り上げていて、滋賀県あたりが近江と呼ばれていたかつての日本を想起させてくれました。
 その上で読む人にわかりやすく。そんな作者様の意図が感じられました。



 そうして臨場感のある物語の世界で、人の身である主人公が、山を7巻もする大ムカデにどのようにして挑むのか。なぜ、挑むのか。主人公の前に現れた少女の正体とは。

 短編と言える長さの英雄譚。歴史物だと敬遠せずに、ぜひ、その眼で確かめてみてください。
 かつての日本を生きた傑物の逸話、必見です!

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