とある喫煙所、煙草で繋がれる人の縁

町に点在する“喫煙所”。そこで演じられるささやかな人間模様を描いた短編集。

と、これだけの説明で収まってしまうこちらの作品、まず感じていただきたいのは「喫煙所」そのものです。喫煙者だからこそ喫煙所に集まることは必然なのですが、そうであるからこそ余計な説明を加える必要がなく、読者をストーリーへ引き込めます。舞台そのものを物語の“起”として機能させる構成は、短編作においてひとつの最適解ですよねぇ。さらに言えば、喫煙者という共通点をもってごく自然にキャラクター同士の距離感を縮めていく著者さんの技法もすばらしい。

そうそう、登場するキャラクターさん方にもまた味があるんですよ。別に尖っているわけじゃないけど、どこか斜に構えている感じで。彼らのまっすぐならぬ言動はユーモラスで少し寂しくもあって。煙草がもたらす間(ま)と相まって、小説の重大要素である「作品のにおい(雰囲気)」としてよく効いているのです。

さくっといい話が読みたい方、人間ドラマをお求めの方、そしてもちろん、喫煙家の方にもおすすめいたしますー。


(新作紹介 カクヨム金のたまご/文=髙橋 剛)

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