やっぱりキャンプは山、それとも海? ボッチはどっち?

にゃんタンめん

海羽と登羽: やっぱりキャンプは山、それとも海? ボッチはどっち?

「お前、何にもわかってないよ、キャンプは山だろ、新鮮な空気と清々しい景色、山でのキャンプが最高だよ。」

「先輩こそ、在り来たりなんですよ、潮の香りと波の音・・・山は静かなだけじゃないですか、なんかネガティブ感が強くないですか・・・」

「海羽(うみは)はわかってないんだよ、その静かさが仕事の疲れを癒してくれるんだよ、一人で夜、焚火を見ながら星空なんか、見てるとさ・・・なんか、俺ってちっちぇえなぁとか思うわけよ。」

「登羽(とわ)先輩こそいいんですか、今一人でって自然に言いましたよ、それってネガティブ因子マックスですよね。


登羽「・・・そういわれりゃそうか!」

海羽「プッ・・あっはっはっは、じゃあ今週末は私と海にキャンプ行きましょう?」

登羽「何言ってんだよ、今週末は栃木にキャンプ行くんだよ・・・って、何、今一緒にキャンプ・・

   海って・・言ったか?」

海羽「言いましたよ。軽くスルーされましたけど・・・」

登羽「俺とお前でキャンプ行くの?」

海羽「おかしいですか?2度聞きするほど・・」

登羽「だって・・いいのか俺と言って面白いのか?」

海羽「行ってみないとわからないじゃないですか・・」

登羽「そうか・・・ん~~~じゃあ行ってみるか!」

海羽「先輩寝坊とかしそうなんで、私が朝スマホに連絡しますよ、番号と、アドレス交換しましょう。」

登羽「おっ、おう!」


懐から携帯電話を出す、登羽・・・


海羽「スマホじゃないんですか?・・・もうつくづくですね。」

登羽「なんだよ、いいだろ困ってないんだから、メールとかしないし、相手もいないし、

   電話なんか用が済めばいいんだから、1か月基本料金だけだよ。」

海羽「うぅわ、先輩本当に24歳ですか?うちのお父さんみたいなこと言ってますよ・・」

登羽「じゃあいいよ・・」


懐に携帯電話をしまおうとする、登羽、それを横取りして自分のアドレスと番号を入力しながら海羽が言う。


海羽「これで相手も用事も同時に出来ましたね、来週は静岡にキャンプですよ。」


山岸登羽 24歳 大学卒業後に大手広告代理店に何とか入社するも、2か月で能力の限界を感じ、今の弱小貿易会社に転職した。小さいアジアン家具から絨毯などを、個人レベルの取引までしてくれる良心的な会社で、自分に向いていると感じていた。


佐川海羽 23歳 登羽の大学の後輩で、同じサークルで何度か顔を合わせ、適度な距離間の“女子”だった。


登羽は積極的に女性に向き合う方ではなく、そういう事(恋愛)には無縁だった、なので携帯電話には両親と弟、そして高校、大学の友人が10人程度登録されているだけであった。登羽の携帯には今日初めて、女子の番号が登録された・・・

今週はイベントホールで雑貨の展示会があり、週末の開催に向けて登羽と海羽は忙しく仕事をこなしていった。


金曜日の夜に海羽からメールが来る。

『明日、大丈夫ですか?起きられますか?(^.^)』

顔文字入りのメールなんて、母親が訳も分からずに使ってくるのしか見たことが無かった。

登羽「こうやって使うのか・・俺も顔文字とか使った方がいいのか?」

『大丈夫だ(~o~)』送信→

受信→『(~o~)何ですか顔文字・・(*^▽^*)うけます!』

『うるさいな、おまえこそ起きられないぞ、早く寝ろ!(~_~)』送信→

受信→『は~~い』

『はいは伸ばさない』送信→

受信→『はい(^^)/ おやすみなさい』


そうして、前の晩の他愛のないメールのやり取りをすまし、歯を磨こうと洗面所に向かった登羽・・ん、俺、明日、女の子(海羽)とキャンプ行くのか・・・

キャンプ前日ののんびり過ごせるという、いつもの軽い高揚感ではなく、歯ブラシを握る手に汗を掻いている自分がいた。 落ち着け単なる後輩とキャンプに行くだけ・・ちょっと海で勝手は違うが・・・いや・・2人となると男子の友達とも行ったことが無かった。少し後悔が始まっていた。なんかとんでもないことを、約束しちゃったんじゃないか・・・

そもそもなんで行くことになったんだっけ・・・などと考えながら、海羽の事を考え始めた、あいつは何なんだ? いきなりキャンプは海だって・・キャンプは山だろ・・そうだ山か海かでこんなことになったんだっけ。 よし明日は海のキャンプを楽しんでみよう・・・ベッドに入っても少し考えてしまう、大学の時から横にはいないが、傍にいた海羽・・会社に入社して来るなんて偶然に正直びっくりした。

サークルの忘年会やイベントの打ち上げで飲み屋の席が近く、なんとなく他人行儀ではあったが、話した記憶が思い出されていた、あの飲み会の時にも俺は、キャンプの話をしていたような気がする・・・「先輩・・・ましょ・・」その時に海羽に何か言われたような気がしたが、断片的で思い出せない・・・そんな昔の記憶を思い返していたら、いつの間にか寝てしまった。・・・・ピロリロリン→『起きましたか先輩』時計を見ると目覚ましが鳴りだす2分前だった。『起きたよ、ありがとな』→、→『いえいえそれじゃ駅で待ってます。』、『了解』→身支度を整え待ち合わせの15分前に駅の噴水前の着いた。

荷物の中身を思い返し、忘れ物が無いか考える。 何とか準備は出来ている、などと考えていると、海羽がやって来た。


「おはようございます。先輩」

 振り返り挨拶を返す。

「おはよう、今日はよろしくね! 荷物は平気?」

「はい、準備万端です。」

「じゃあ行こうか!」


切符売り場に向かい歩き出す。

海羽が尋ねる、「先輩昨日は何時に寝たんですか?」

「今日出かけるから10時半くらいには床に就いたかな。」

「そうなんですね、メール終わったら割とすぐ寝たんですね。」」

「なんで?どうしたの?寝不足気味か?」

「少し目が冴えちゃって・・・」

「電車で寝ると良いよ、2時間くらいあるし。」

「はい、でも寝られるかな・・・」


電車に乗り荷物を片して、座席に落ち着くと、海羽がウトウトとしだした。

1駅通過を待たずに寝てしまった海羽、登羽は海羽の寝顔を見て、昔のこんなことがあったような気がして、それが何なのか思い出そうとしていた。


電車ではほとんど、話もしないで目的の駅に到着した二人。

登羽が海羽をからかう「口元によだれ付いているぞ。」

真っ赤になって口元を見ようと鏡を出す海羽、その様子を見た登羽が昔の事を思い出した。


登羽「大学の時にこんなことなかったか?」

海羽「・・・はい、ありました。私、居酒屋さんで寝てしまって、頬にセーターの裾の跡が付いている

   先輩が教えてくれました。」

登羽「そうだった、なんとなく思い出したよ。」

海羽「キャンプ場までどうしましょう、バスですか?」

登羽「いや時間がもったいないし、レンタカー借りておいたよ。」

海羽「正直、重かったんで・・・助かりました。」

登羽「そう・・・じゃあここで待っていてよ、俺も荷物ここに置いて車だけ借りて来るよ。」

海羽「ありがとうございます。荷物の番は任せてください。」

登羽「任せたよ」と言ってレンタカーを借りに急ぐ。

海羽「先輩思い出してくれたんだ・・・でもどこまで思い出したんだろう・・?」


しばらくすると、一番安いプランのレンタカーを乗り付ける登羽。


海羽「かわいい車ですね!」

登羽「安いから選べなかったんだ、これで勘弁してくれ。」

海羽「最高ですよ、座っていたら着いちゃうんですもん。ハハハッ」

登羽「運転せんのかい!」

海羽「ペーパーゴールドです。」

登羽「来月辺りから営業車運転させようと、今、俺は心に決めた!」

海羽「そんなぁ、都内は電車が便利です。」

登羽「逃げたな・・・フフ それじゃ荷物積んじゃおうか。」


2人は荷物を積み海岸線へ向かって車を出した。


車中で海羽が尋ねる?


海羽「先輩はキャンプずっと一人なんですか?」

登羽「ぼっちキャンプの方が性に合ってるんだよ。気楽でさ。」

海羽「彼女とかは一緒に来ないんですか?」

登羽「昔、彼女が居た時は誘ってみたんだけど、虫、泥、トイレ、風呂問題が解決出来ずに、

   一回もキャンプしなかったな。はっはっはっはっはっは。」

海羽「じゃあ私が初めて一緒にキャンする人ですか?」


登羽はしばらく考えて・・・


登羽「そういやそうだな・・・海は慣れてないから勘弁してくれよ。」

海羽「私も慣れてないから、勘弁してください。」

登羽「えっ・・慣れてないって、海でキャンプをいつもしてるんじゃないの?」

海羽「・・・すみませんでした・・・嘘です、キャンプ今日で2回目です、小学校の時、

   家族で来たのが初めてです、だから緊張して眠れませんでした・・・」

登羽「そうなのか・・・でも、どうしていつも海でキャンプしてる・・なんて嘘・・・」

海羽「やっぱり先輩は覚えてなかったですよね・・・先輩が卒業する時の送別会で、

   他の男の先輩と話しているのを聞いたんです。


----------------------------------------回想--------------------------------------


山下(登羽の親友)「お前は何で山しかキャンプ行かねえの? 海とか湖は嫌なのか、泳げないのか?」

登羽「キャンプ行くんだから、海だって湖だって泳がないけど、なんか一人で行くとすると、

   山が落ち着くんだよ。」

山下「この先も一人で山か? そんなんだから彼女が居ないんだよ、お前は・・・」

登羽「ほっとけよ、ん~~~そうだな彼女が出来て、その彼女がキャンプ行きたいって言ったら、

   その時初めて、海のキャンプに誘ってみるか・・・なんてな・・・はっはっはっは!」


------------------------------------そんなことがあった-----------------------------


登羽「お~~~山下とそんなこと言ってたかもしれん。よく覚えてたな。」

海羽「そりゃあ覚えてますよ、ずっと先輩を見てましたから・・・」

登羽「ん、それは・・・また・・・えっ!」

海羽「鈍いんですか? 私は先輩が好きで、初めて一緒にキャンプ行く女の人になりたくて、海でキャンプしてるなんて、大嘘つきました、バックパックの中身は今週、ネットでポチッた、道具ばかりで、使い方も全く分かりません、ランタンなんか2個も買っちゃって、スタンドにガソリン買い行って、笑われたし、も~~~~何言ってんだろわたし・・・」

登羽「知らなかった、すまなかった・・えっ・・じゃあこの会社入ったのも・・」

海羽「そうです、先輩、大手の広告代理店にいったって聞いたから、すっごい猛勉強してやっと受かったら、とっくに居ないし、そっから直ぐに辞めて探したら、よく分からない業界に入ってるし・・なんとか入れたから良かったですけど・・・今日だって緊張して、まったく眠れなくて・・電車で色々話そうと思ったら、徹夜明けで爆睡ですよ・・もうなんかうまくいかなくて・・で、結局鈍い先輩は、私の事なんてなんとも思ってくれていませんか?」

登羽「・・・何も思っていないと言えば嘘になるかな。・・・23才だった俺はお前に失恋をしているし・・・

   昨日だって携帯の電話番号見て、なんか家で落ち着かなかったし・・」

海羽「私、先輩をフッたことなんてありませんよ」

登羽「まあ聞いてくれ、さっき言ってたセーターの裾が頬に付いていた時、最初、酔ったお前を心配しているだけだったんだが、しばらく見てたらなんか、こいつなんか可愛いなと思っていたんだ・・・だけど結構人気あって、山下までいいなッとか言ってるし、俺じゃあダメそうだな、なんて考えていたら、噂を耳にして・・・」

海羽「あ~~~弟と一緒に居た時の噂ですか?」

登羽「そう、それだ弟だと知ったのは、もう就職してからだった・・・

   だから一方的な失恋」

海羽「それ失恋じゃないじゃないですか・・私・・バカ見たいですかねぇ?」


車はキャンプ場に到着している、水面がキラキラと輝いて眩しい。


登羽「いいもんだな海のキャンプ・・・初めての海キャンは彼女とって

   決めていたから、今日から海羽は俺の彼女でいいか?」

海羽「はい・・・先ずは道具の名前から覚えます、

   テントは知ってますけど、買ってません、先輩のだけで十分でしょ?」


-----------------------------------------完-------------------------------------




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