まとわりついてくる読後感

 どう形容したら良いか。
 叙情的な湿り気、哀愁、退廃的な空気をまとう時代を感じるスモーキーさ。
 何とも、まとわりついてくる読後感だ。

 〝病める者〟と〝死に行く者〟の館、という台詞が端的に、この作品全体を顕しているのではないだろうか。
 そこで退場していく人物もいるわけだが、それは我々読者にも当てはまるものとなっている。

 主人公が作中で書き悩む小説——劇中劇と重ねて、その構造が不思議とサイケデリックさを垣間見せるわけだが、文学的と抽象するには安易だろうか。

 人生を前進させられない、抱えた歪み、ドラマの中で捉えて表現しているように思う。
 そこに美しさを見出すかは、人それぞれだろう。