「駅」という、人生の分岐点を預かり守る。そんな影のヒーローたちの物語!

 あらすじについては作品そのものや、他の方のレビューでしっかり語られているので、そちらを参考にしてください。

 簡単にまとめるなら駅――人々の人生の分岐点――を影で支える、鉄道員というヒーローたちの物語です。

 まず何といっても、その読み易さが挙げられます。三人称で語られる物語は誤字脱字もほとんど無く、表現も硬すぎず、柔らかすぎないちょうどいい塩梅。当たり前のことがきちんとこなされているため、物語にスッと入りこむことが出来ます。

 さて、そうして見えてくるのは、作品最大の魅力となる「駅」に生きる鉄道員たちの日常です。実在する「大阪駅」を舞台にしている事もあって、日ごろ何気なく利用している駅の内装・外装はもちろん、客や裏方の人々が丁寧に描かれる。そうして形と色のある“現実”に時折、散りばめられているものが“ファンタジー”――鉄道員が持つとされる「超能力」の謎です。

 本作のもう1つの見どころになる「超能力」。これについて深く言及されるのは、物語がある程度進んでからになります。ですが、そこに“焦れったさ”といったようなテンポの悪さは感じないはずです。
 多くの方にとって馴染みが無いだろう駅の裏側。そこを新しい職場として奮闘する主人公の日常風景1つ1つが新たな気づきの連続で、新鮮に映るはず。夜勤はどうなっているのか。業務はどうなっているのか。そうして主人公を中心に覗き見る鉄道員たちの日常を追っていれば、気付けば、彼らだけが知る超能力の秘密にもたどり着いてしまうでしょう。それを手助けしているのがやはり、上述した読み易さになるわけです。

 超能力を知り、本当の鉄道員になったことで主人公が見る世界が変わります。その時になってようやく、私達は駅と、登場人物たちの「本当の姿」を見ることになるのですが…。
 やがて、主人公は手にした超能力を使い、どのようにして人々の安全を、人生を、鉄道員として守るのか。


 普段よく知る場所の知らない部分を知るという新発見。実在し、リアルな現実の描写があることによって、あたかも本当に超能力があるかのような錯覚を味わうことが出来る、現代ファンタジーならではの良さがしっかりとある作品。必見です!

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