好きになったの相手は落ちこぼれ? そんなコンプレックスなんて打ち砕け。

本作の主人公、園田菜乃花の恋する相手は、一流企業の御曹司であり、イケメン、成績は学年トップ、スポーツ万能、芸術面にも秀でているという、完璧超人、天坂総司……の弟、天坂千影。
こんなも完璧なお兄さんを持つ千影君ですが、彼自身はお兄さんと比べると、いえ、例えお兄さんを抜きに考えてても、テストで赤点をいくつもとる落ちこぼれという、恋愛もののヒーローとしては、いささか以上の低スペック。さらにはお兄さんへの劣等感と、周りの心ない声によってすっかりコンプレックスを抱えてしまってい、女性不振になり、二次元に彼女を作るように。

しかし、恋というのは相手のスペックを求めてやるものではありません。恋愛好きの読者目線で語るなら、いかに勉強やスポーツができようと、それらはあくまでオプションにすぎず、真にそのキャラの魅了となるのは、大抵の場合、その内面です。
そして菜乃花が千影君に惹かれるようになったのも、スペックや外見ではなくその中身。いつも図書館で黙々と勉強する彼を見て、日々努力を続けるその姿を見て、自分も頑張ろうと心動かされます。
実際読んでみると、千影くん、いい子なのですよ。先に挙げた努力家な面はもちろん、物語の開始早々、ふとしたことから菜乃花をケガさせてしまうのですが、その責任を感じ、治るまでメイド付きの特別豪華な学生寮での暮らしを提案。どうして周りの子は、彼の良さに気づかないのと思ってしまいます。
もっとも、一途に彼に好意を寄せる菜乃花を思うと、良さに気づいてライバルが増えたりしたら、ちょっぴり複雑ではありますが。

さらに菜乃花の恋を阻むのは、彼がこれまで培ってきたコンプレックスと、二次元にいる彼女。千影くんだって菜乃花のことを憎からず思っているでしょうけど、恋愛となると、そう簡単にはいかず。
彼のコンプレックスと二次元彼女を越え、その心を射止めることができるのでしょうか。

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