とある事情から、東京を離れ田舎のおばあちゃんの家で暮らすことになった高校生の千冬。
おばあちゃんはあの有名な妖、雪女。その孫である千冬も、雪女の特性をいろいろと引き継いでいます。
暑さに非常に弱かったり(物理的に溶けてしまう)
負の感情が高まると冷気を放出したり(コントロールできません)
その特殊さゆえ、雪女の血を引いていることはもちろん秘密なのだけど――
丁寧な心理描写と個性豊かな登場人物たち。純粋に楽しい物語ですが、人と『違う』ことで悩んでいる方に特におすすめです。
恋と友情と、そして自分自身に向きあうスノーガールの青春。ぜひご覧ください。
高校生の綾瀬千冬は、雪女のクオーター。
もちろん、自分が雪女であることも、特殊な能力が使えることも内緒で暮らしています。
そんな彼女は、とある理由から田舎の高校に転校してくることになりました。
高校では、ちょっと変わった白塚先輩に誘われ、「保冷剤の君」岡留くんと、郷土文化研究部という名の妖怪研究会に入ることになって……、と始まる物語。
この作者様。
どちらかといえば、ふんわりとした雰囲気の物語を作り出されるイメージがあったのですが、今回はキャラクター達が大人びていて、とても新鮮です。
物語はまだ冒頭ですが、しっかりと伏線が張り巡らされている気配があり、読み続けるのが毎日楽しみ。
千冬の、雪女ならではのウィークポイントや、岡留くんとの恋模様もどのように展開されるのか。
ラストまで目が離せません。
雪女のお話は、皆様ご存知かと思います。
雪女に一人だけ救われた漁師が美しい嫁を迎え、口止めされていたにもかかわらず、雪女について語ってしまう……しかし実は嫁こそが彼を助けた雪女で、約束を破った夫の元を去ってしまうというストーリーです。
あの結末は、私にとって悲恋の物語として胸に強く残っています。
そのため私の中では、雪女というと薄幸のイメージが付き纏いがちでした。
この物語の主人公、千冬にも、暗い過去の影があります。
なのでずっとハラハラ心配しながら見守っておりましたが、そんな不安は杞憂に終わりました!
優しい人達に囲まれて、友達付き合いに部活動に恋に、千冬は存分にアオハルを楽しんでくれます。
こんなにあたたかいと溶けてしまうんじゃ……と逆に心配してしまうくらいに(笑)
しかし、順風満帆とはいきません。
重い過去や不本意な悪意にさらされ、時に大きく傷付くことも。
けれど皆の手に支えられ、千冬は乗り越えて成長していくのです。
もちろん、甘くて切なくてキュンキュン不可避な恋からも目が離せません!
まだまだ寒い日が続きますが、この物語を読んで、体だけでなく心もほっこりしてみませんか?
アオハルは春だけじゃない!
雪女の紡ぐあたたかなアオフユを味わってください。
普通ならば、雪とは人を冷たく悲しくさせるものかもしれません。この作品に並ぶタグも、「妖」「雪女」「いじめ」と、あの雪女伝説を思い起こさせる悲劇のイメージを連想させます。
しかしながら、この『アオハル・スノーガール』は吹雪が吹き荒れた次の日のような、穏やかな陽射しに満たされた冬の晴れ間を思い起こさせる作品です。
物語のスタートは黒髪の綾瀬千冬が心に傷を抱え、一人で逃げ出すように引っ越してくる、バスのシーンから始まります。雪女のクォーターである彼女が何を抱え、何から逃げて来たかが、ストーリーを通して追々に語られてゆきます。
真夏の茹だるようなバスでの、岡留君との出会い。転校した学校で出来た、クラスメートの友達。引っ張られるように入部した、部活の先輩。
その人たちとの心の交流を経て、移り変わってゆく少女の成長を、ゆっくりと穏やかに描き出す事こそが、この作品の本質にあるのですから。
人の真心に寄り添った暖かなエピソードの数々、作者さまの優しい心がギュギュッと凝縮した「優しさが溢れた物語」、あなたも読んでみませんか?(^ω^)
前の学校でいじめに遭ったことで転校してきた『雪女』の少女・千冬が、青春を取り戻す物語です。
あやかしであることはもちろん、いじめの原因となった白い髪のことも秘密。
千冬は新しい学校に馴染めるでしょうか。
学校という小さなコミュニティにおいて、「みんなと違う」ことは悪として捉えられがちです。
一度うまくいかなかったから、新たな一歩を踏み出すのが怖い。
そんな千冬を、きっとあなたも応援したくなるでしょう。
いつも保冷剤で助けてくれる岡留くんとの恋の進展はもちろん、千冬に仲の良い友達ができたことがすごく良かったなぁと思いました。
一緒に行動できる、いつでも味方をしてくれる友達がいるだけで、学校生活は驚くほど色付きますね。
吹雪を作り出す冷たい手でも、大事な人の温かい手を握ることができる。
心までポカポカしてくるような、爽やかで可愛らしい物語でした。
妖と言われて皆さんはどんな生き物を想像しますか。
河童、猫又、土蜘蛛、昔から伝承されてきた数多の妖の伝説が日本には数多存在します。
会ったことがあるという人は少数でしょうが、実は彼らはひっそりと日本の現代社会に溶け込んで今も暮らしていると知ったら驚きますか?
千冬ちゃんはおばあちゃんを雪女にもつ、雪女のクウォーターです。雪女の力を受け継いでしまったためその力のコントロールに苦心し、以前の学校を転校して新しい学校へ移ってきたというところから物語が始まります。
雪女ですから、やっぱり体が冷たかったり、髪が白かったり、生まれつきの能力がたくさんあります。それを隠しながらのお友達作り。大好きな人が出来てもそれを隠さなければならない彼女の苦労。
日常生活で起こる問題がとてもリアルで、読みながら「ああ、もう! 何て意地悪なんだ!」「うう、千冬ちゃん可哀想」と感情を揺り動かされました。
無月さんの描かれる女の子ってとにかく純真で可愛いのです。作品の大きな魅力ではないでしょうか。
学校生活で起こる問題は千冬ちゃんが雪女であるから生じた問題でしょうが、そういうことは現実でも実際に起こり得るのではないかなと想像します。心の機微を丁寧に描いた作品でしてリアルな学生生活と彼女の抱える悩み、芽生えてゆく恋心、等身大の飾らない彼女が魅力的に描かれた作品です。
雪女も恋をするし悩むんです。
まだ物語は途中です。行方を一緒に追いましょう!
その時の出逢いは偶然だった。
冷房の故障したバスの中で、溶けそうになっているところに、手が差し伸べられた。いえ……、保冷剤が差し出されたのだ。
物語の序盤から、ヒロインが実は……。あっ! と、言わせられるのはわたしだけじゃないはず。
もう、最初から、そんなキャラクターの設定が素敵なのだ。ヒロインの言動の全部がかわいい。
そんなヒロインが、様々な苦悩の末に、田舎に住む大好きなお婆ちゃんを頼って、この時期に転校してきた。
そこで、繰り広げられる、理解ある優しい友人たちとの学校生活は、自然と過去の疵を癒してくれるが、やはり、理解できない人たちは、どこにもいて……。事件が勃発する。
ヒロインは、その苦難を、どう乗り越えていくのか……。ハラハラしながらページを捲った。どうしても、幸せになってほしいと願いながら……。
でも、ラストは、感動すらする。読めて良かったと思った。
素敵なアオハル物語である。
本作は『雪女』という属性を持つ高校生の少女が、とある理由で田舎町に引っ越してきて、そこで学園生活や恋を経験するというユニークな物語です。
珍しい設定だとは思いますが、飛び抜けてはちゃめちゃな事はなく、程よくコメディで、程よくリアリティを残したまま、雪女であり高校生でもある少女の等身大の葛藤や心情を描いております。
文章もストーリーも読みやすく、すんなり頭に入ってきて、起承転結もしっかりしていて綺麗に纏まっており、まるで商業作品のようだと感じました。
雪女が出そうな寒い季節ではありますが、皆様もぜひ本作を読んで心を温めてみてはいかがでしょうか。