第23話 武器の適性
「とりあえず、説明するから誰か代表者1名出てきてくれ」
みんなのもとへ遅れてたどり着くと、用意された場所の1つでビルフォードさんがそう告げたところだった。
「では、私が」
「うむ、ではよろしく頼む」
誰が出るのかと思っていると、予想通りというか、平井先生がみんなの顔を見回してから出てきた。
なんというか、異世界に来たというのに本当に教師しているなぁ。
そんなことを考えている間にも、ビルフォードさんが平井先生を相手に適性検査を進めていく。
と言っても、見ている限りでは本当に大したことはしていない。
手渡された武器を平井先生が軽く振っているだけだ。
「……これで適性がわかるのですか?」
手渡された剣を3種類ほど振ったところで、平井先生が疑問を口にする。
うん、まあ、本当にただ剣を振っているだけだからな。
「ああ、この方法で問題ないぞ。
特に何も感じないのであれば剣に対する特別な適性がないということだろう。
次は槍を試してみてくれ」
その言葉と共に受け取った槍を平井先生が構えた瞬間、先生の表情が変わった。
次いで、腰だめに構えた槍を素早く何度も突く。
その姿は、明らかに先ほどの適当に剣を振っているものとは違って見えた。
「なるほど、これが適性があるということですか」
「そうだ。
まあ、人によってはそこまではっきりとわからない場合もあるが、ヒライ殿の場合は槍の適性があるのは間違いないようだな。
この調子で残りも確認してくれ」
「槍の適性があるとわかったのに、残りの武器も確認するのですか?」
「ああ。
別に1人につき1つしか武器の適性がないというわけではないからな。
まあ、槍以上の適性がある武器はなさそうではあるが、メインを槍にするとしても、サブで他の武器を持つというのもありだからな」
「なるほど。
では、一通り確認してしまいますか」
そう答えた平井先生が次々に手渡される武器を確認していく。
適性があるという感覚がどのようなものかわかったからか、先ほどまでよりも迷いなくスムーズに進んでいるようだ。
「結局、適性があったのは、槍に斧槍、杖か。
突いたり払ったりする動作が向いているようだな」
「ひとまず終わりましたが、この結果はどうなんですか?」
「うん?何の問題もないぞ。
何なら、どの武器にも適性がなくても問題はない。
もちろん適性があるに越したことはないが、どの武器であろうと勇者として“創造神の加護”を受けた貴君らであれば、訓練すればどの武器でも人並み以上にはなるだろうからな」
「はあ、そういうものですか」
ビルフォードさんの答えに拍子抜けしたのか、平井先生が気のない言葉を漏らす。
まあ、あれだけ確認させられて、どれでもいいというのではな。
実際はどれでもいいと言っても適性のある武器を使うのだろうから、無駄な行動だったというわけではないのだろうけど、言い方がひどい。
「さて、これで適性の確認方法はわかったと思う。
確認場所はもう1ヶ所用意しているので、2ヶ所に分かれて順番に確認を行っていってくれ」
憮然とする平井先生をよそにビルフォードさんがみんなに向かってそう告げる。
一瞬みんながためらうようにしつつも、それほど間を置かずに2ヶ所に分かれていく。
「俺たちはどうする?」
その様子を確認してから、本条さんたちへと問いかける。
みんながそれぞれの場所へ移動したことで、周囲には俺たち3人だけの状態になっている。
「どうするって、普通に確認すればいいんじゃないの?」
「まあ、そうなんだけど。
どっちに行こうかとか、誰から確認しようかとか?
後は、みんなの適性を確認しておくかどうかもかな。
誰がどんな適性だったかを把握しておいた方が良いかもって」
「みんなの適性の確認は必要ないんじゃないですか。
これからの訓練を見ていれば自然とわかるようになると思いますし」
「それもそっか。
だったら、無理して確認するほどでもないか」
「そうそう。
確かに気にならないわけじゃないけど、そっちに気を取られて自分たちの適性を確認できない方が問題だと思うよ。
というわけで、空いているほうに行って順番に確認していこうよ」
深く考えていなかった確認の言葉に対して言い訳じみた理由をつけてみたが、普通に流されてしまった。
まあ、実際その通りだと思うから別にいいんだけど。
「じゃあ、確認に行こうか」
2人の言葉にそう答えて空いている離れている方の確認場所へと向かうことにした。
「うーん、何というかパッとしない結果だったね」
クラスメイトたちに紛れて実施した適性検査の結果に明石さんがそうこぼす。
個人的には一応適性のある武器が見つかったから問題はないと思うのだが。
「パッとしないって……。
適性のある武器があっただけ良かったと思いますよ」
うん、本条さんは同じ意見のようだ。
とりあえず、武器の適性については、俺が短剣、本条さんと明石さんが杖という結果だった。
まあ、明石さんがパッとしないとこぼしたくなるのもわからないではない。
適性武器が短剣と杖というのは確かに地味だから。
でも、何人か適性のある武器が見つかっていないのを考えると、適性のある武器が見つかっただけましだとも思うのだ。
「でもさー、杖とかどうやって戦えばいいのかわからないじゃない?
せっかくなんだから剣とかでパーッと敵を薙ぎ払うようなのが良かったんだけど」
「いやいやいや。
敵を薙ぎ払うって、明石さんの適性って“死霊術師”だったじゃん。
普通にイメージ通りだと思うけど」
「それを言われると、確かにそうだけどさー」
未だに納得がいっていない様子の明石さんから視線を外し、本条さんに目を向ける。
だが、本条さんは苦笑いで軽く首を振るだけだった。
「はあ……。
まあ、確かに短剣も杖も正直パッとしない武器だというのはわからないでもないよ。
でもさあ、忘れてるみたいだけど、俺たちに“創造神の加護”はないんだよ」
「「……」」
仕方なく付け加えた言葉に、明石さんだけでなく本条さんまで苦笑いを止めて絶句している。
いや、貴女も忘れていたんですか……。
「確かに杖や短剣でどう戦うのかっていう問題はあるけど、少なくとも“創造神の加護”がない状態でやみくもに武器を試す必要がなくなったということだけでも歓迎すべきことだと思うよ。
というか、適性的には2人とも武器を使って直接戦うよりも魔法とかを使って戦う感じだと思うし」
そういう意味では、短剣で“影使い”という適性の俺が一番不安なんだよなあ。
現状、この3人で動くことになる以上、おそらくは後衛の役割になるであろう2人を短剣と謎の適性を使って守らないといけないんだから。
せめてオーソドックスに剣に適性があるとかだったら、剣と盾でどうにかってことも考えられたのに。
「まあ、終わったことは置いておいて、俺たちも戻ろうよ。
またビルフォードさんのところに集まってこれからの話をするみたいだし」
固まったままの2人にそう声をかけて話題を変える。
武器の適性確認にはそこそこ時間がかかったが、まだ昼食の時間には早い。
とはいえ、訓練を始めるには中途半端だし、かといって話だけというのも微妙に時間が余りそうではある。
そんなことを考えながら、2人と一緒にみんなが集まっている場所へと向かっていった。
邪神に呪われた俺は元の世界に帰ることができるのだろうか? はぐれうさぎ @stray_rabbit
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