第3話 私の想い(由乃視点)

私は、家に帰って布団に倒れ込んだ。


「うぁ〜〜!」


と声を上げて、布団の上で枕を抱きしめて、ゴロゴロとする。

私は、初めて好きな人が出来た。やっと、周りがよく言う恋する乙女になれたのだ。あんな事があったら誰もが好きになるのではないだろうか。彼の事は、中学の時、家の帰り道で人助けをしているの所を見かけたことがある程度。その時は、彼に対しては誰にでも優しくできる人なんだなくらいに思っていた。でも、命を懸けて私を助けてくれたあの時にほんの少しだけ見えたあの必死な表情に私は一目惚れした。あの事故が起きる時、私はスマホのメッセージアプリのLi□eで中学の時から仲の良い友達と話していた。そして、気付いた時には、車が迫っていて、避けないといけないのに体が竦んで、動けなかった。私はほとんど何も声を発さず、『あ、死ぬんだ…』って思った。諦めたその時、後ろから誰かに突き飛ばされるように前に倒れた。倒れたはずの私は、衝撃こそあったが、どこも怪我はなく、同じ学校の制服を着た男の子の上に覆いかぶさって居た。その男の子が橘くんだった。それからというもの橘くんのことを考えると胸が苦しくなり、顔も熱くなる。私の事を外面だけで告白してくる人は数え切れないほど居た。結局、誰も好きになれなかった。だけど、彼はなんだか違うと感じた。だからなのかな、私の事をもっと知って欲しい、そして、橘くんが何が好きで何が嫌いなのだろか、好きな子いるのか、それとも、もう彼女が居るのか。教えたいこと教えて欲しいこと、知りたいことがいっぱいある。何より、この気持ちを伝えられるくらい仲良くなりたい。…あ!そう言えば、連絡先聞いてなかったな…


「よし、何がなんでも明日聞かなきゃ!」


この時の私は、自分がどれだけ学校の人気があるのかをまるでわかっていなかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る