第7話 帰り道

「今日のホームルームはこれで終わりだ。気を付けて帰るようにな」


「起立、礼」


ホームルームも終わり、今日の放課後には特に何も無いのでこれから帰宅するだけとなった。唯一、嫌なことと言えば、帰りは車ではなく、家までこの足で帰らないと行けないということだ。はぁ、しんどくて嫌だ。


「あの、橘くん!その、一緒に帰りませんか?この前のこともありますから」


相川さんが両手の人差し指をつんつんとしながら恥ずかしそうにしながら、聞いてきた。


「え、うん、いいけど…その、他の人はいいの?」


「いいんです!荷物少し持ちますよ」


周りから嫉妬や殺気のような視線が主に俺に向けられる。それに、男子のトップカースト組からは『誰だよ、あいつ…相川さんと仲良くしやがって…』と言う小声も聞こえる。もうさっさと出た方が良さそうだな。それに、相川さんにもあの声が聞こえたのか、声のした方に少し怒っているような表情で見た。そして、何事も無かったようにすぐに笑顔に戻った。


「ほら、行きましょう!」


「わかった。あと自分の荷物くらい自分で持てるから」


と自分の荷物を持ちながら、松葉杖を着きながら歩くと、途中で手提げ袋が落ちてくる。


「そんな歩きにくいことをしてたら転けますよ。私のために怪我した橘くんはもう少し私を頼るべきです!手提げ袋くらい私が持ちますから。ほら、貸してください」


と相川さんに言われ、わかったと言い渋々、肩にかけていた手提げ袋を相川さんに渡し、教室を出た。


「色んな人達に見られてますね」


「そうだな。きっとみんな、相川さんと帰りたかったんだと思うよ」


「それは、今後困るので毎回、断らないとですね」


「それ、やり過ぎると友達いなくなるからな」


「それは、経験談ですか?」


「ノーコメント」


一年生の教室は、体育館の近くにある。だから、校門に向かうだけで色んな上級生の先輩方とすれ違う。そして、すれ違う度にほとんどの先輩方は俺たち二人を見た後、俺が自分の教室にいた時のような視線を浴びせてくる。


「はぁ、本当に嫌になります。みんな、私が可愛いから、お近付きになりたいって言うのが多いんですよ。特に男子は」


「一応、俺も男子だからね…」


「橘くんは、そんな人達とは違いますよ」


「いやいや、判断早すぎない?」


俺だって、男だ。相川さんをそのような目で一切、見てないは言いきれる自信がない。


「そんな事ないですよ。それに、私、それなりに人を見る目はある方ですよ」


「そうなんだ。相川さんが信頼してくれてるなら、裏切らないようにしないとな」


「ふふ、そうですね」


相川さんと話をしながら歩いていると、もう家が見えてきた。思ったより早く家に着いたな。


「ありがとう、相川さん」


「もう着いちゃいましたか…もう少し一緒に居たかったですが、今日は帰りますね」


「ああ、それじゃあ、また明日」


「はい、また明日。お弁当楽しみにしててくださいね!」


「うん、楽しみにしてる。入学式の時の様なことがないように、気をつけてね」


そう言って、家に入る。『もう少し一緒にいたかった』その言葉を聞いた時、俺は少しドキッとして顔が熱くなっていた。

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