第5話 昼休み

相川さんは挨拶してくれた後、少しキョロキョロと顔を動かした後、また直ぐに俺の方を向いて、


「ねえ、橘くん。席ってもう決まってたりする?」


「いや、まだ決まってないと思うよ。春樹、分かる?」


俺は、ニヤニヤしまくっていた春樹に仕返しとするかのように話を振った。


「え!いや、多分決まってないと思うぞ。特に座席表とかなかったし。てか、いきなり振るなし!少し、びびったやん!」


「ふっ…悪い!」


「笑いやがって、ぜってー、思ってねーだろ…」


「いやいや」


そんな話をしているうちに、相川さんは席が決まってないことを知ると、すぐに俺の隣の席に荷物を置き、席をキープした。


「由乃!おはよう!」


「あ、おはよう!舞!」


「見てたよ、由乃。自分から男子の近くの席に座るなんて、珍しい事もあるもんね!」


「い、いいでしょ!だって、……」


何故か俺の方をチラチラ見ながら言い訳と思われることを言っていた。声が小さくて聞こえなかったけど。


「ふぅん、まあ、いいや。あたしは葉山舞。君達は?」


と質問が俺と春樹に飛んできた。


「俺は、玄道春樹だ、よろしく!葉山さん。それで、こっちの怪我してんのが橘だ」


相変わらず、春樹の物怖じせず話せる陽キャラ感ハンパねぇ…俺には絶対無理。


「橘優斗。これからよろしく!」


「よろしくね、2人とも!あとあたしの事は舞って呼んで。苗字は色々あって嫌いなの」


「わかった」「了解!」


それから、4人でどこの中学出身なのか、部活はどうするのかなど色んな話をした。


キーンコーンカーンコーン


チャイムが鳴り、担任の先生から校内の案内をするからと外に並んだ。


特に何も何事もなく昼休みとなった。


「春樹!飯どうする?」


「優斗は?中学の時みたいに弁当?」


「この怪我でそんなめんどくさいことするとでも?」


「確かに、無理だな。じゃあ、食堂行くか?」


「おう、そうだな」


「あ、あの!__」


声がした方に振り向いたが、周りのみんなが相川さんを取り囲んでいたのを見て気のせいだろうと思い、俺は昼食を食べるために春樹と食堂に向かった。それに、相川さんは人気だからクラスのトップカーストの人達や学年関係なく人気な先輩たちと問題なく食べるだろう。


___


「思ったより、空いてるな」


「確かにもっといると思ってた。先に席取るか?」


「おう、その方がいいかもな」


俺と春樹は、出入りのしやすい少し手前の席を取ってから食券を買いに行くことにした。


*由乃視点*

私は、クラスのみんなや先輩たちからの誘いを断って食堂に少し急いで向かっていた。断るのに理由を聞かれたりと少し時間が掛かってしまった。


「由乃、本当に良かったの?断っても」


「いいの!私が嫌だって言ってるのに、それでも言い寄ってくるのは男子だろうと女子だろうと嫌いなの!。舞は知ってるでしょ!」


「ねぇ、由乃、もしかして、気になる人でも出来た?」


「そ、そんなことは…なんでニヤニヤしてるの!」


「いやいや、由乃はわかりやすいなって思ってね。それに、自分から男子の隣の席を急いで取ってる時の由乃可愛かったな〜。それで、橘くんなの?」


「舞には関係ない!」


「ふふ、顔が真っ赤でわかりやす〜い。後でしっかり教えてね!」


「う、うっさい!教えないから!」


舞は、食堂に向かうまでの間ずっと私を見てニヤニヤしたりと楽しんでいた。私は私で顔が湯気が立つように暑くなっていた。食堂に着いた時に丁度、橘くんは食券を買うために玄道くんと並んでいるところだった。


「あ、いた!橘くん!」


私が橘くんを呼ぶと少し驚いた顔をしていた。


*優斗視点*


「あ、いた!橘くん!」


俺は、後ろを振り返るとそこには相川さんと舞さんがいた。俺は、その事に少し驚いてしまった。だって、あれだけの人が居たのに誘いを断ったのだろうか?


「あ、相川さんと舞さん。みんなから誘われてたんじゃないの?」


俺は、素直に気になった事を聞いた。


「私は元々、由乃と一緒に食べるつもりだったからね」


「わ、わわ、わたしは…その、き、昨日のこともありますし、その…ダメでした…か?」


俺は、相川さんの少しテンパりながらも頑張って言葉を紡ぐ可愛らしい声とその上目遣いに耳まで真っ赤になってる姿がすごく可愛らしい。なんだか、俺まで暑くなってきた。


「だ、ダメじゃない!むしろ、嬉しいというか、その、あ、相川さんに迷惑がかからないかなっていうか…」


「優斗がめっちゃ動揺してるし、面白すぎる。くくく」


「由乃も顔真っ赤!付き合い始めたばかりのカップルみたい!」


「「私(俺)と橘くん(相川さん)はまだそんな関係じゃあ…え…」」


「「まだ?へぇ〜」」


「「うるさい!」」


俺と相川さんは息を合わせたように、一言一句同じことを発して、食堂に響き、色んな人からの視線を集めていた。春樹と舞さんはそれからずっとニヤニヤしながら見てくる。今の俺は、恥ずかしさで顔が真っ赤になっているだろう。そして、それは目の前にいる相川さんも同じようだった。


「…その、早く進んで貰っていいですか?」


「「「「あ、はい…」」」」


と他の生徒に言われ、揃って返事をして急いで食券を購入、相川さんと舞さんを席まで案内した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る