第4話それぞれの朝

「うぅん〜!はぁ」


昨日の事の怪我もあり、なんだか、疲れが取れ切ってない気がする。それに、足にギブスがあるせいでベッドから起きたり、動いたりするのがめっちゃ不便だし!骨折が治るまでは車で送って貰えるけど、親にも仕事というものがあるから早く降りないと間に合わなくなる。


「おはよう」


「「おはよう、優斗」」


昔から聞いてるからなんとも思わないけど、二人はびっくりするほど、息ピッタリだなと偶に思う。


「何時に家出る?」


「んー、あと20分後くらいには家を出る」


「おっけー。そんじゃ、いただきます」


母さんが準備してくれた朝食をパパッと食べ終え、着替えるために部屋へと戻った。着替えは、上はすぐきることができるが、制服のズボンを履くのは片脚をあげられない分、少し時間が掛かる。


「よし、準備できたから、車乗っとくよ」


「おう、了解。それじゃ行ってくるよ」


「いってらしゃい!」


俺は、親父の車に乗り少し早いが学校へ向かった。



***

「由乃!そろそろ起きないと遅刻するわよ!」


「はーい、もう起きてる〜!」


私は、そう言って急いで身だしなみの準備を終えて、リビングに向かった。


「朝食は、机の上にあるのを食べてね」


「わかった」


「それじゃ、お母さんは先に行くわね。戸締りよろしく!」


「いってらしゃい!って私も早く出ないと遅刻しちゃう!」


私は、どちらかと言うと朝に弱い方の人間だ。だから、今日みたいにギリギリまで家にいることもある。


「行ってきます!」


私は、鍵を閉めて、誰もいない家に向かって『行ってきます』を言ってから、少し急ぎながら学校へ向かった。



***

少し早く来すぎた俺は、ほとんど誰も来ていない教室で本を読んでいた。最近は、恋愛小説にハマっている。


「おはよう、優斗って足、どうした?」


「おはよう、春樹。この足は、昨日、この学校の相川さんを助ける時に車を避けきれなかった結果がこれ」


「なんかお疲れ…てか、相川さんって言ったか?」


「ああ、そうだけど、それがどうかした?」


「俺が昨日、言ったと思うけど首席の相川さん、学校だとめっちゃ可愛いって有名なんだよ」


俺は、病院に来てくれた彼女に見惚れていたのを思い出す。


「確かに、可愛がったのは覚えてるよ」


「もしかしたら、ラブコメみたいなことが起きるかもな」


「いや、それは無いだろ。あったとして、多少、話す機会が増えるくらいだろ」


「はぁ、少し期待はしないのかよ」


「期待して何も無かった時の悲しみを深くするよりは、期待しない方がいいがいいって考えてるだけだ」


「ひねくれてんな」


昔も言われたが、俺はそんなにひねくれてないとは思うんだが。春樹とそんな話をしていると相川さんが教室に入ってくるとクラスのみんなが相川さんに挨拶をする。流石は人気者。俺が後ろに振り向くと、相川さんと目が合った。


「あ、おはよう!橘くん!一緒のクラスだったんだ!嬉しい!これから、よろしくね!」


「あ、ああ、おはよう。こちらこそよろしく、相川さん」


相川さんが他の人よりも明らかに嬉しそうな声のトーンと笑顔で挨拶をしてくれた。それと同時に、春樹はにやにやしながら見てくるし、クラスメイトは、男子からは嫉妬に満ちた視線、女子からも嫉妬や好奇の視線が向けられるのだった。

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