一度は読んでほしい異世界転移ものです
- ★★★ Excellent!!!
私達から見ていわゆる「異世界」にあたるエステリア王国。この世界には、時々異世界(私達がいる世界)から人が落ちてくる。この世界に、元自衛官であるコーヘイが落ちてくることで物語は始まる。……といういわゆる異世界転移もの。
───ではありません!!
特筆すべきはその緻密な世界観です。昨今は異世界転生・転移ものが流行っていますが、大抵の作品ではあまり触れられない「異世界に転移することはどういうことか」という部分に、きちんとフォーカスされているところが魅力。
例えば異世界転移してきた人を管理、サポートする組織があったり、異世界転移者ゆえの悩みや偏見があったり……と細部まで丁寧に作り込まれている世界観に、驚かされることばかりです。
この世界にも魔法という概念はありますが、魔法のしくみそのものにまで理論的な説明が取り入れられており……とにかく全てにおいて整合性がとれている為に没入感が違います。
前半は異世界転移してきたコーヘイと、数年前に同じように異世界転移してきた登録局員のフレイアを通した世界観の説明と水面下でうごめく陰謀の影。
後半は帝国ゴートワナや宗教団体、異世界人殺しなど、陰謀を中心に話が進んでいきます。張り巡らされてきた伏線を回収しながら少しずつ解けていく謎に読む手が止まりませんでした。
そして最後にわかるタイトルの意味。
この真の意味を知ったとき──あなたはきっと涙するでしょう。
とても心に残る、印象的な一作でした。