本物のヒーローは日常の中に

 誰もやりたがらない。しかし、誰かがやらなければならない。
 数ある警察の部署の中でも、その性質上『なんでも屋』『貧乏くじ係』と揶揄される生活安全課防犯係。
 多忙をきわめる部署にもかかわらず、日の目を見ることのないその係に配置されて七ヶ月。今日も今日とて行方不明者を捜す主人公の詩織はため息が止まりません。

 ただ、ひと口に行方不明者といっても、その事情は千差万別です。
 早急にみつけださないとまずい案件もあれば、いや、これはむしろ、みつからないほうがいいのでは……? というものも。

 ため息をつきつつも、ひとつひとつの案件に体あたりでぶつかっていく詩織。まっすぐすぎて少々危なっかしいのですが、直属の上司である鷹取部長やら係を指揮する谷上班長やら、彼女をサポートする上司陣が非常にかっこいいです。

 警察官であるかぎり、法は遵守しなければならない。でも、だからこそ、彼ら彼女らはその中で『最善』を模索する。
 ときには愚痴もこぼせばため息もこぼす。そんな等身大の登場人物たちが織りなすリアルな警察小説であり、骨太な人間ドラマです。光のあたらない場所にこそ、本物のヒーローがいるのかもしれません。

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