人はその瞳に映るものだけしか信じられないのか

まず最初に一言言わせて頂きます。久しぶりに涙腺に来るお話を読ませて頂き、誠にありがとうございます。

さて、お話の内容ですが、ライトな文体とは対照的に、胸を強く締め付けるような重めのストーリーとなっております。

主人公の『陸奥』さんは、この世界に蔓延る『異形』と呼ばれる怪物の研究をする青年で、当初は『異形』に対して恐怖心を持っています。それはこの世界の人間にとってはごく自然な事で、『異形』は人類にとっては天敵、というのが共通認識として存在しています。
そして『陸奥』さんは、ある超常現象――これは先述の『異形』と何か関係がある、もしくは彼らの仕業に拠るものと推測され、その現象の調査に赴きます。
ですが彼が見た光景は、人間に仇なす怪物が作り出したとは思えない、美しく儚い光景。
更にはそこで出会う『異形』に味方する女性『アサヒ』さんとの出会いが、彼に世界の真実を伝えます。
ですが、その真実は優しくもあまりにも残酷で……

読みやすい文章で、仰々しくない伏線とその回収から、作者さんの高い文章力を感じました。

プロローグとエピローグの題を同一にしている所も、このお話の深さを感じさせます。
エピローグを読まれた後に、もう一度プロローグを読む事を強くお勧めします。

非常に感動的で、考えさせられる物語でした。
この様な素晴らしい作品を書いてくれた事に、感謝を述べさせて頂きます。ありがとうございました。

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