マラソン大会当日。準備体操が終わった後、先に女子がスタートして、男子は少しの間、待機させられた。


 「マラソン大会、めんどくさいなー。そういえば、けいは休みだっけ?」


 「病欠らしいな、どうせ仮病だろうけど。」


 二人の男子生徒が話している。


 「そういえば、あの噂、知ってる?俺らの高校に代々、伝わる都市伝説『影が無い生徒』の話。」


 「あー、あれだろ?見たら死ぬ、ってやつ。」


 「ん?俺が聞いた話だと、影を奪われるって。」


 「そうなの?」


 「ああ。特定の人にだけ見えて、影が無いのを見てしまうと、影を奪われてしまうって。そんで、影と一緒に存在まで奪われるんだと。」


 「存在が奪われる?」


 「そう、奪った奴がそいつに成りすまして生きていくんだって。」


 「奪われた方は?」


 「奪われた方は、次の『影が無い生徒』として見つかるまで、誰にも認知されない人として生きていかなきゃいけないらしい。」


 「ふーん。」


 「まぁ、あくまで噂だからなー。圭はこんな話、好きそうだけど。、仲いいんだし、教えてやれば?」


 「ああ、そうだな。」


 そう言って、黒川くろかわ いつきは笑った。

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陰影 小餡 @ikoan_20190518

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