嫉妬が嫌いな僕たちに

 誰かを手放しで褒めることが出来るとき、きっとそれは他人だからなのだろう。ネットの海を漂って、才能を肌で感じられるときのような。

 才能のある絵描きに出会ったとき、綺麗で一度聴いたら耳から離れないような高音を持つ歌い手に出くわしたときのような。

 才能を「嫉妬」という感情を通らないで、「凄い」と単純に思えるとき、それがどんなに幸せなことか。


 しかし、この小説にそんな優しさはない。

 誰かを褒めるとき、そこに黒い感情が付随するとき、その才能には「自分」という存在が介在しているように思う。

 自分の至らなさという事実を軽視して、羨望に走るときほど虚しいものはない。

 七海という存在が、どう主人公に影響を及ぼし、彼を変えるのか。必読。

嫉妬しかできない自分の愚かさを呪う。