あとがき
私がライオットオブゲノムの構想を得たのは、黒人男性が白人警察官に射殺されたニュースがきっかけでした。
あれは新型コロナウイルスが流行を始めた時だったと思います。
マーティン・ルーサー・キング・ジュニアが、「I have a dream」と演説したのは1963年。
残念ながら、50年以上経った今も、彼の夢は叶えられていないようです。
人種差別の報道はこれだけでは止まらず、ライオットオブゲノムを書き始めた後も続きました。
黒人射殺
ウイグル人の差別
コロナでのアジア人差別
イギリス王室の差別問題
アイヌ民族の差別表現
その他にも、
日韓・日中問題
香港の独立問題
台湾と中国の統一問題
ミャンマーのクーデター など。
人種問題だけではありませんが、この九ヶ月の間、平和とはかけ離れたさまざまなニュースが取り上げられました。
人が、人として生きることすらできない。
大きすぎる過去のわだかまり。
その度に感じる思い。
この思いは、シエラやユリミエラの愛ある言動になったり、サミュエルが過去にとらわれずアイザックを許したり、国の差別の教えが国民に強く根付いたり、シエラの色を決めたり……ライオットオブゲノムの中の色々な脚色になりました。
私は、人種差別のない地域、家庭で生まれ、育ちました。
人種差別はないものの、私の周りには、両親から愛情をもらわずに育った子ども、大人が沢山いました。
子どもにとって、大人にとって、愛情はとても大切な栄養です。
特に、幼い子どもにとっては、その後の人生を大きく変えることにもなります。
彼らの苦しみを見る私の中で、人種差別と似たような心の痛みがありました。
作品の中では、私が感じた彼らの心の叫びを登場人物が表現しています。
大人になってからも愛情の受け皿を作ることはできますが、そこに到達するまでに、本人も、愛情を注ぐ側にも、大きな痛みが伴います。しかし、それを乗り越えれば、これ以上にない絆ができるのも事実。
そして、その経験があるからこそ、同じような人たちの痛みがわかる。
どれが一番いいかは人それぞれですが、私は、できればどの子どもも、本人が「愛されている」と思える形で愛情を受け取れたらいいなぁ、と思っています。
私の母も、両親から愛されたとは言えなかったようです。
それでも私を一生懸命育ててくれました。
そんな母に、聞いたことがあります。
「なんでお母さんは、ポジティブになれたの?」
虐待は8割が連鎖すると言われていたからです。
母はこう答えました。
「赤毛のアンを読んでいたから」
母は、赤毛のアンの小説を通して、自分の不幸な経験をポジティブに昇華していたんです。物語を通して勇気をもらった経験は私にもたくさんあったので、なんとなくわかる気がしました。
物語には、そんな力があるんだと。
今回、ライオットオブゲノムに登場している人物は、私の周りでもがき苦しんでいた人たちや、私の大好きなE.H.エリクソンの発達段階を参考にしています。
母がそうだったように、登場人物を通して、読んでくださった誰かの困難をポジティブに変えれるといいな、と思いつつ。
私の名前は中村 天人です。
「作者を不在にし、ライオットオブゲノムを現実にしたい」
だから、作者は地上ではなく、天の人にしました。
全ての人が、人種、性別、年齢、思想、マイノリティーに関わらず、平等に幸せに生きられますように。
最後に。
この物語と出会った方も、まだ出会っていない方も、世界の人の心に愛情の灯火が灯ることを祈り、幕を下ろします。
もしよろしければ、シエラの誕生秘話であるライオットオブゲノムのエピソードゼロが2作ありますので、ご興味があればそちらも覗いてやってください。
「6年の時を経て、俺は今両親の仇を打つ」:サミュエル視点
https://kakuyomu.jp/works/1177354054967899326
「シルビアの逃亡」:シルビア視点
https://kakuyomu.jp/works/16816452219895507457
また、少しでも面白かったと思っていただければ、⭐︎で評価をいただけるととても嬉しいです。
長い間応援してくださり、本当にありがとうございました。
沢山の励ましのおかげで、無事に完結を迎えることができました。
皆様に、心より感謝いたします。
中村 天人
ライオット オブ ゲノム 〜孤児でいじめられていた私ですが、どうやら魔女だったようなので、悪い奴をやっつけて国を大改造することにしました〜 中村 天人 @nakamuratenjin
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