最期に笑って

仲仁へび(旧:離久)

01



 笑って、なんてひどい事言うんだ。

 こんな時に、笑えないよ。


 笑えるわけない。


 悲しみがとめどなく溢れてきて、喜びの感情なんてどこにも見つからないのに。


 それでも、おばあちゃんは「笑って」と私に言う。


 ベットの上。

 もう、自力で動く事もできないおばあちゃん。


 ずっとずっと小さかった頃から、大好きだった。


 その体は枯れ木のように細くて、何かあったら、すぐに砕け散ってしまいそう。


 小さいころは大きく感じたのに、いつのまにこんなにか弱く見える様になったんだろう。


 髪をなでてくれていた、おばあちゃんの手のひらも、こんなに小さくてしわしわ。


 私が泣き続けていると、おばあちゃんが再び「笑って」と言った。


 私は「何で?」としゃくりあげながら問いかける。


「人生の最後に見る物は、一番素敵で大切なものにしたいんだよ。ああ、私はこんなに可愛い孫がいて幸せだったなってそう思いたいんだよ」


 そう言っておばあちゃんは「我が儘でごめんね、許しておくれ」と言った。


 仕方がない。


 いつまでも泣いてたら、おばあちゃんが安心して眠りにつけない。


 だから、私は精一杯の笑顔をつくって、おばあちゃんを見送った。


「おばあちゃん、今まで見守ってくれてありがとう」


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最期に笑って 仲仁へび(旧:離久) @howaito3032

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